第34話 亀次郎、トゥクトゥクで迷子!?長政、昔の地図を頼りに…

賑やかなバンコクの街を、カラフルなトゥクトゥクが軽快に走り抜ける。車内では、瑠奈と亀次郎が興奮気味に景色を眺めていた。


瑠奈:「亀次郎さん、見て!あれはワット・ポーだね!黄金に輝いてて、すごい綺麗!」


亀次郎:「へぇ~、こりゃあ驚いた!わしの時代には、こんな派手な建物はなかったなぁ~」


瑠奈はスマホで寺院の写真を撮りながら、「インスタにアップしよっと!」と呟く。


亀次郎:「インスタ…?何じゃ、そりゃ?」


瑠奈:「え~っと、簡単に言うと…写真とか動画をみんなに見せることができるやつ!亀次郎さんもやってみる?」


亀次郎:「へへっ、面白そうじゃねえか!でも、わしはこんな小さな箱より、筆と墨で絵を描く方が得意でね…」


瑠奈:「そっか~。今度、亀次郎さんの絵をアップしてみようかな!」


楽しげな会話が続く中、トゥクトゥクは徐々に賑やかな大通りから外れ、細い路地へと入っていく。


亀次郎:「おいおい、運転手さんよぉ、この道、合ってるのかい?だんだん怪しくなってきたぞ…」


瑠奈も不安になり、運転手に尋ねる。


「あの~、すみません。ワット・プラケオに行きたいんですけど…」


しかし、運転手はタイ語で何かを呟くだけで、瑠奈の言葉は理解できない様子。


亀次郎:「なんてこった!言葉が通じねえとは…わしらの時代は…」


瑠奈:「ちょっと待って!スマホで地図アプリ…あれ?電池切れ!?まじか…」


**まさかのスマホの電池切れ!地図アプリが使えず、完全に迷子になってしまった二人。**運転手は、悪びれる様子もなく、トゥクトゥクを路肩に停めてしまった。


亀次郎:「おいおい、どうすりゃいいんだい!?瑠奈ちゃん、困ったなぁ…」


瑠奈:「どうしよう…長政さん、何かいいアイディアない?」


瑠奈の頭の中で、山田長政の声が響く。


『よし、ここはわしに任せよ!わしの記憶を頼りに、道案内をしてやろう!』


瑠奈:「え…?長政さん、大丈夫なの…?でも、長政さんの知ってるバンコクって、400年前の姿でしょ…?」


『**心配するな!街の構造はそう大きく変わらんはずだ!**さあ、地図を出せ!』


瑠奈は仕方なく、バッグからガイドブックに入っていたバンコクの地図を取り出す。


亀次郎:「おぉ!これは便利じゃねえか!わしの時代には…」


長政: 『**待て、それは現代の地図じゃ!わしの記憶と照らし合わせるには、もっと昔の地図が必要だ!**瑠奈よ、お前の持っているもので、昔のバンコクを描いたものはないか?』


瑠奈: 「えーっと…昔の地図…?うーん、ガイドブックには古い寺院とかの写真はあるけど…」


長政: 『寺院の写真…よし、それで良い!瑠奈よ、その写真を見せてみろ!』


瑠奈はガイドブックから、アユタヤ時代の寺院が描かれたページを開いて見せた。


長政: 『むむ…この寺院の形は…そして、この川の位置は…よし、わかった! 瑠奈よ、わしの指示通りに動け!』


瑠奈は、半信半疑ながらも、長政の指示に従って地図と周囲を見比べる。


長政: 『まず、南に向かって…大きな木が見えるだろう?その木の横の道を…あれ?ちょっと待て…この道は…わしの記憶と違う…』


瑠奈: 「やっぱり…長政さんの時代と、今のバンコクは全然違うみたいだよ…」


亀次郎: 「おいおい、長政さんよぉ、大丈夫かい?ますます迷っちまったんじゃねえか…」


長政: 『うむ…これは…予想外じゃ…』


長政の道案内は全く役に立たず、二人はさらに迷路へと迷い込んでしまった。


日も暮れ始め、辺りは薄暗くなってきた。不安と焦りで、瑠奈は泣きそうになる。


亀次郎: 「瑠奈ちゃん、大丈夫かい?泣くな、泣くな。きっと、誰かが助けてくれるさ…」


瑠奈: 「でも…どうしよう…スマホの電池もないし…」


その時、瑠奈はハッと気づいた。


瑠奈: 「あっ!そうだ!私の腕時計…GPS機能が付いてた!」


瑠奈は、慌てて腕時計のGPS機能を起動する。


瑠奈: 「よかった…まだ電波がある!これで、現在位置がわかる!」


亀次郎: 「GPS…?何じゃ、そりゃ?」


瑠奈: 「え~っと…簡単に言うと…衛星を使って、自分の場所がわかるすごい機能!」


亀次郎: 「へぇ~、便利な世の中になったもんだなぁ…」


瑠奈は、GPS機能を使って、現在地を確認し、近くの道路まで歩いていくことに決めた。


瑠奈: 「よし!この道をまっすぐ行けば、大通りに出られるはず!亀次郎さん、行こう!」


亀次郎: 「おう!」


二人は、薄暗い路地を歩き始めた。しかし、緊張と不安からか、瑠奈のお腹がゴロゴロと鳴り始めた。


瑠奈: 「やばい…また、あの予感が…」


そして、瑠奈のお腹から、大きな音が…


「ブッ!!」


亀次郎: 「うわっ!?瑠奈ちゃん、大丈夫かい!?」


瑠奈: 「ご、ごめんなさい…緊張すると、つい…」


しかし、その瞬間、奇跡が起こった!


なんと、瑠奈のおならの音に気づいた近くの住民が、声をかけてきた!


住民: 「ちょっと!そこの二人!道に迷ってるのかい?」


瑠奈: 「は、はい…迷子になっちゃって…」


住民: 「そうかい、大変だったね。私のトゥクトゥクで、大通りまで送ってあげるよ!」


瑠奈: 「ありがとうございます!」


亀次郎: 「助かったぁ~!」


こうして、瑠奈と亀次郎は、親切な住民の助けで、無事大通りに戻ることができた。


瑠奈は、心の中でつぶやく。「やっぱり、最後は、いつもの私のおならで一件落着か…」


そして、もう二度とスマホの電池切れで困らないように、モバイルバッテリーを持ち歩くこと、そして、長政の地図ではなく、GPS機能付きの腕時計の必要性を痛感したのであった。

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