第5話 巨大魚との対決!

瑠奈は大学に入学して初めての夏休みをバンコクで過ごしていた。タイ語の勉強のために滞在中、彼女はフリーペーパー「タイ自由ランド」で日系釣具店『MOKOLEY』の記事を見つけた。その記事は、話題の巨大魚釣堀「Amazon BKK Fishing Park」へのツアーを紹介していた。

瑠奈は内心、少し不安だった。というのも、彼女の頭の中には、いつも戦国武将・山田長政の記憶が渦巻いていたからだ。ソムタム事件以来、事あるごとに長政の声が聞こえてくるのだ。

「瑠奈よ、巨大魚とな? なかなか面白そうではないか! 武士たるもの、強大な敵と戦うのは当然の務めよ!」

長政の声が、瑠奈の頭の中で高らかに響く。

「もう、長政ったら… 釣り堀だし、そんなに大げさじゃないわよ」

瑠奈は心の中でため息をついた。しかし、長政の言葉は、なぜか瑠奈の闘争心に火をつけてしまうのだった。

「よーし、ソム! 今日は絶対に巨大魚を釣り上げて、長政を見返してやるんだから!」

瑠奈は拳を握りしめ、意気込んだ。彼女は、雨の日に出会った日本語を話すチュラロンコン大学の学生レディーボーイの友人ソムを誘って、ツアーに参加することにした。


いざ、巨大魚釣堀へ!

バンコクから車で約2時間。緑豊かな郊外に、「Amazon BKK Fishing Park」はあった。そこは、まるでアマゾンのジャングルを切り取ったかのような巨大な池だった。水面には、巨大なピラルクやレッドテールキャットフィッシュが悠々と泳ぐ姿が見える。

『MOKOLEY』のスタッフが、笑顔で二人を出迎えた。

「サワディーカップ! ようこそ、アマゾンBKKへ!今日はピラルク釣りですね?」

瑠奈はたどたどしいタイ語で答えた。

「サワディーカ! ええと… ピラルク… ツリタイデス!」

瑠奈のタイ語に、スタッフは大笑い。ソムは流暢なタイ語で通訳を買って出た。

「大丈夫! 今日は君たちに、最高のピラルクを釣らせてあげるよ!」


初めてのルアーフィッシングに苦戦!

スタッフの案内で、二人は釣り場へと移動した。そこは、足場が良く、釣りやすい環境が整っていた。スタッフから釣り竿とルアーの使い方を教わった瑠奈とソム。しかし、ルアーフィッシングは初めてだったため、なかなかコツが掴めない。

「う〜ん… どうやったら釣れるんだろう…」

瑠奈は苦戦していた。

「長政! なんかアドバイスないの!?」

瑠奈は心の中で叫んだ。

「むむむ… わしは弓矢の達人ではあったが、釣りはなぁ…」

長政も困っている様子。

その様子を見ていたソムが、笑いながら言った。

「瑠奈、そんなに力んじゃダメよ! リラックスして、魚の気持ちになってみましょう!」

ソムは、ルアーを水面に投げ入れる。すると、次の瞬間、竿がしなった!

「キターーー!!」

ソムのリールが、勢いよく回り始めた。


ソム、巨大魚を釣り上げる!

「すごい! ソム、頑張って!」

瑠奈は興奮しながら応援する。ソムは、全身を使って巨大魚との格闘を楽しむように、竿を操っていた。

「瑠奈! 手伝って!」

ソムの呼びかけに、瑠奈は慌てて駆け寄る。二人がかりで、ようやく巨大魚を釣り上げることができた。

それは、1メートルを超える巨大なレッドテールキャットフィッシュだった。銀色に輝く魚体は、力強く、美しかった。

「やったー! 釣れたー!」

ソムは満面の笑みで、巨大魚を抱きかかえた。瑠奈も、自分のことのように嬉しかった。


瑠奈、ついにピラルクと対峙!

ソムの成功を見て、瑠奈の闘志に再び火がついた。

「次は私の番よ! 絶対にピラルクを釣り上げてみせる!」

瑠奈は、気合を入れてルアーを投げ込んだ。すると、水面に大きな波紋が広がり、瑠奈の竿に重みが伝わってきた!

「こ、これは…!」

瑠奈は、全身に衝撃が走るほどの強い引きを感じた。リールを巻こうとするが、全く巻けない。

「な、なんだこの力は…!?」

瑠奈は、今までに感じたことのない、巨大な力に圧倒されていた。

「瑠奈! 落ち着いて! 竿を立てて!」

ソムが冷静に指示を出す。瑠奈は、必死に竿を立て、巨大魚との格闘を始めた。


山田長政、瑠奈を導く!

巨大魚との格闘は、想像以上に過酷だった。瑠奈は、腕がパンパンになり、汗だくになっていた。しかし、諦めるわけにはいかない。

「瑠奈よ! その巨大魚は、まるで戦国の世を生き抜いた猛者のような強さよ! 全身全霊で立ち向かうのじゃ!」

長政の声が、瑠奈の闘志を奮い立たせる。瑠奈は、長政の言葉を胸に、巨大魚との最後の勝負に挑んだ。

竿を大きく振りかぶり、渾身の力でリールを巻き始めた。巨大魚も負けじと抵抗する。しかし、瑠奈の決意は、巨大魚の力をも上回った。

「うおおおおおー!!」

瑠奈の叫び声とともに、巨大魚が水面に姿を現した。

それは、2メートル近い、巨大なピラルクだった。その姿は、まさに古代の怪物のようだった。


予想外の展開!

スタッフの助けを借りて、瑠奈はようやくピラルクを釣り上げることができた。その瞬間、達成感と安堵感に包まれた。

「やった… やったよ、長政!」

瑠奈は、心の中で長政に報告した。

「うむ… 見事じゃ、瑠奈! お主は、わしの誇りじゃ!」

長政の声は、満足感に満ち溢れていた。

瑠奈とソムは、巨大なピラルクを抱きかかえ、記念撮影をしようとした。しかし、その瞬間、ピラルクが激しく暴れ出した!

「きゃあああ!」

「わああああ!」

二人の悲鳴とともに、ピラルクは池に飛び込んだ。そして、その勢いで瑠奈とソムも一緒に水中へと転落してしまった。

ずぶぬれになった二人は、お互いの顔を見合わせて大爆笑。この予想外の展開が、最高の思い出として、永遠に記憶に残ることだろう。


新しい発見!

巨大魚との格闘を終え、瑠奈は、大切なことに気づいた。それは、自分の中に眠る、未知なる可能性だった。山田長政の記憶は、時に瑠奈を混乱させることもあったが、同時に、彼女に勇気と力を与えてくれた。

「長政、ありがとう。あなたのおかげで、私はまた一つ、強くなれた気がするわ」

瑠奈は、心の中で長政に感謝の言葉を伝えた。

「なに、礼には及ばぬ。わしは、いつでもお主の味方じゃ」

長政の声は、優しく、力強かった。

瑠奈は、これからも様々な困難に立ち向かうだろう。しかし、彼女の中には、山田長政の魂が宿っている。どんな試練も、乗り越えられるはずだ。

瑠奈とソムは、ずぶぬれの服を着たまま、夕日に染まる空を見上げ、未来に向かって力強く歩き出した。この奇妙で楽しい冒険は、二人の友情をさらに深めるきっかけとなったのだった。

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