第3話 不憫かわいいエピソード:あの日の約束


不憫かわいいエピソード:あの日の約束

プロローグ

バンコクの街は、熱気と活気にあふれていた。日本から移住してきた17歳の瑠奈は、異国の地で新しい生活を始めて6ヶ月が経過した。彼女は自分のSNSアカウントを通じて、友達とつながりながら日々の出来事をシェアしていた。しかし、彼女の心にはいつも「不憫さ」がつきまとっていた。


不運な一日

ある日、瑠奈は友達と一緒にカフェでランチをすることに決めた。彼女は特に楽しみにしていたが、その日の朝、彼女の愛犬が急に体調を崩し、病院に連れて行くことになった。愛犬のために時間を費やし、結局カフェには遅れて到着することになった。

「ごめん、遅れちゃった!」と息を切らしながら言うと、友達たちは優しく笑って迎えてくれた。しかし、彼女が頼んだスイーツはすでに売り切れ。代わりに出されたチーズケーキは、見た目がイマイチで、味も期待外れだった。


さらなる試練

その後、友達との会話が盛り上がる中で、瑠奈は自分が「不憫かわいい」として注目されることに気づく。彼女の不運なエピソードが笑い話になり、「瑠奈って本当に不憫だよねー!」と友達が冗談交じりに言う。

その瞬間、瑠奈は少し恥ずかしくなったが、自分の不運さが周囲を楽しませていることを理解し、心の中で微笑んだ。しかし、その後もトラブルが続く。帰り道に雨が降り出し、傘を持っていない彼女はずぶ濡れになってしまった。


思わぬ出会い

ずぶ濡れになった瑠奈は、近くのコンビニで一時避難することにした。そこで目に入ったのは、一人の美しいレディーボーイだった。彼女は明るい笑顔で瑠奈に日本語で声をかけ、「大丈夫?傘貸してあげるよ!」と言った。

瑠奈は驚きつつも感謝し、「マジ?ありがと!でもごめん、迷惑かけちゃって」と答えた。するとレディーボーイは、「気にしないで!私も昔、不憫なことばっかだったから」と笑顔で返した。その言葉には温かさがあり、瑠奈は少し元気を取り戻した。


5新しい友情

レディーボーイとの日本語での会話は弾み、お互いの趣味や夢について語り合った。瑠奈は自分の「不憫かわいい」エピソードを披露すると、レディーボーイは大笑い。「ヤバい!私もさ、昔デートの日に雨降ってきて全身びしょ濡れになったことあるよ」と共感してくれた。

その瞬間、瑠奈は自分だけではないことを実感し、新しい友情が芽生えた。二人は連絡先を交換し、「ねえ、今度一緒に遊ぼうよ!」という約束を交わした。


6不運から学ぶこと

数日後、瑠奈とレディーボーイは再び会うことになった。今回は晴天だったため、公園でピクニックをすることにした。しかし、その日はまたもや不運な出来事が待ち受けていた。レディーボーイが持参したサンドイッチにはアレルギー成分が含まれていて、食べた瞬間にアレルギー反応が出てしまったのだ。

「やばい、ごめん!こんなことになるなんて思わなかった!」と焦るレディーボーイ。しかし瑠奈は、「大丈夫だよ!私もよくあるから」と励ました。この経験から二人は、お互いの不運さを笑い飛ばすことで絆を深めていく。

山田長政との対話

その夜、瑠奈はベッドに横たわりながら、頭の中で山田長政と対話を始めた。

瑠奈:「ねえ長政さん、私って本当に不憫なのかな?」

山田長政:「瑠奈よ、不憫とは見る人の目次第じゃ。お主の不運は、むしろ新しい出会いや経験をもたらしておるではないか」

瑠奈:「まあね。でも、時々めっちゃ辛くなるんだよね」

山田長政:「わしも異国の地で苦労したことがある。だが、そこから学んだことが後の成功につながったのじゃ。お主の不運な経験も、きっと何かの糧になるはずじゃ」

瑠奈:「長政さんの言う通りかも。日本語で話せるレディーボーイの人との出会いも、私の不運がきっかけだったしね」

山田長政:「そうじゃ。お主の不憫さは、人々の心を温める力を持っておる。それを誇りに思うがよい」

瑠奈は山田長政の言葉に励まされ、明日への希望を胸に秘めながら眠りについた。

数週間後、瑠奈とレディーボーイはSNSで「不憫かわいい」コンテンツとしてお互いのエピソードをシェアするようになった。フォロワーたちからも共感や応援の声が寄せられ、「不憫かわいい」キャラクターとして人気者になっていった。

瑠奈は時々、頭の中の山田長政に相談しながら、自分の不憫さを肯定的に捉えるようになっていった。彼女の投稿には、しばしば「山田長政の教え」と題した、人生の教訓めいた言葉が添えられるようになり、それがまた彼女の独特な魅力となっていった。

「不運は、新たな扉を開く鍵となることもある」という山田長政の言葉とともに、瑠奈の「不憫かわいい」な日々は続いていくのだった。

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