工藤悠斗の場合①

私は今、世界で一番幸せであると自負している。なぜかって?


ずっと片想いしていた幼なじみの彼と付き合えたからだ!


付き合えたその日は日課の空手の稽古も勉強も何も手につかず、まるで夢の中にいるような気分で過ごした。


そこから1ヶ月程経ち、ついに今、運命の瞬間………


そう、ファーストキスである。


校内でするのはいかがなものかと思ったが、夕焼けが差しているもののほんのり薄暗く、様々な部活の音が微かに聞こえてくる誰もいない放課後の教室。


シチュエーションとしてこの上ないでは無いか!?


もうそうなったら止められないし何より『そういう雰囲気』になっているのでもう止められない。


そして私の初めて(たいそうな表現だがまだキス)を彼に捧げた―――




「へえ、なんかおもしろいことしてるじゃん。」

―――――――――――――


翌日。

私は放課後にとある男に呼び出されていたので、航平には先に帰ってもらっていた。


それで、誰だったかこいつは。


見るからにチャラそうな襟足を伸ばした金髪にピアス。いくら校則で「生徒の自主性を重んじるため、服装は学生らしい範囲内で自由とする」と書かれているからって羽目を外しすぎた。


ああ思い出した。こいつ、もとい工藤悠斗は生徒会でもちょくちょく話題に上がっている素行不良生徒の内の一人だ。


過去に暴力沙汰になりかけた事例も何回かあり、教師も口出し出来ないという典型的な不良だったな。


こういうやつとはあまり関わりたくないんだが…


「それで、私に何か用か?」

「わざわざ来てくれてありがとね笑

ちょっと千世さんに見てもらいたいものがあってさ」


こいつの微笑腹立つな。人を見かけで判断してはいけないと言っても限度がある。

実際生徒会のみんなで工藤を取り押さえたこともあるらしく、こいつの言動がいちいち癪に障る。


「千世さんってさ、生徒会長として立派だよね。凛としてるっていうか、校則は絶対に守るタイプっていうか笑」

「ああそうだな。学生である以上校則を守るのは至極当然のことだからな。なあ、さっさと本題に入ってくれないか。私も暇ではないんだから。」

「ああごめんごめん。じゃあさじゃあさ、そんな千世さんが校則を破ってるってなったらみんなからの信頼ってどうなるかな?少なくとも『俺らみたいな奴ら』からは、あいついつもお高く止まってて自分はこれかよ笑ってなるし、他の人だってきっと千世さんのことをもう心の底から信頼できなくなるんじゃないかーって思うんだよね!」

「…?いまいち何が言いたいのかよくわからないな。」


―――――「これさ、千世さんと湊でしょ」


そう言いつつスマホの画面を見せてくる工藤。


そこには、私と航平が教室でキスをしている写真が写っていた。


「――――――ぁ、」


撮られていたのか。

顔面蒼白になり手足の震えだす私とは裏腹に、スマホの画面は自分をよく見ろというかのようにらんらんと光り輝いている。



「『校内での不純な行為は一切禁止とする』――だっけ?昨日生まれて初めて高校の校則とか読んだから。これで合ってる?笑」


まずいまずいまずいまずいまずい。

小さい頃から規則を遵守することを心がけていた私にとって、「校則を破って親や教師、友人からの期待を裏切る」というのは、他の人が思う何倍も、何が何でも避けたいことであった。


「…それを見せて何がしたい。」

「いやー、これを教師に見せたらみんなにがっかりされちゃうね。いい子ちゃんの千世さんはそういうの嫌でしょ?だからさ〜…



   俺の言うことをちょーっと聞いてくれたら誰にもこの事は言わないよ?」


なんだと。私が少し我慢するだけでこれはなかったことにできるのか。何をすればいいんだろうか。1週間パシリとかご飯を奢るとかそういうやつだろうか。少し腹立たしい気持ちはあるがこれを無かったことにできるなら―――


「それで、私は何をすればいいんだ。」

「うんうん、お互いにメリットのある判断だね。じゃあさ―――



   (やっぱこいつ、ちょろっw) 


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

NTR漫画とかによく出てくるようなシチュですね今回は。

まあリアリティないですよねぶっちゃけ。

校則とか彼氏との犯罪行為(高校生カップルでラブホ行くみたいな)を使われて脅されてそれにのってしまう…


あるあるですがそんなことで脅してくるヤンキーものっかるアホもいないですからねー…


でもどうしてもNTRのテンプレってやつを書いてみたかったんでこうなりました。


あと作中の描写からわかるように千世さんちょっとアホの子はいってます。




俺は男勝りでしっかりしてて少し抜けてるお姉さんが大好きなんだよ(迫真)

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