@minahu

第1話

私は愛情に飢えていた。

ひと時、好きになってしまえば、私はその子に固執する。一人にならないように私だけを愛してくれるように。何度も死のうとするし何度も消えようと試みる。ただ、勇気が足りないのだ。毎回死ねずに生きながらえる。

もう一度もう一度と繰り返すが私は生きている。

結局、生きたいのだ。私は殺されるのを待っている。


私を、好きだって言ってくれる彼の中には私ではなく違う女性が住んでいる。私は彼のものにはなれなかった。彼も私のものになってはくれない。私が好きと言えば大好きと返してくれる。愛してると言えば愛してると返してくれる。それでも私は彼の中には住むことが出来ない。

 お互いはお互いに自信がないのだ。

一人を愛し続ける自信。相手の望みに応える自信。

それでも傷を舐め合って、お互いに存在を確認し合って生きている。

私じゃなかったらってずっと考えている。

私でなければきっと彼は今よりは幾分か楽しく生きられたんじゃないかと。

「俺じゃなかったら、もっと幸せになれるよ。」

「別に幸せになりたいわけじゃないよ。」

何度この会話をしたのかもうわからない。本心だった。

「私は幸せになりたいんじゃなくて、ただゆっくり楽に生きたいの。」

「いい人が居るって言うけれど、私にとってそれは貴方だよ。」

そう、伝えたかった。私はただ、貴方が私のものになってくれるなら何でもよかったの。

でも、貴方は私のものにはならないし、私を貴方のものにもしてくれない。

私にはもう時間が残ってないから、これを書き残しているけれどいい機会になったと思う。

私がもうすぐ死ぬと言ったとき、彼は

「泣いてない。」

と酷い鼻声で言っていた。その時私は、場違いに嬉しいと思ってしまった。

もうすぐ終わらせる人生の中で、たかが私が死ぬだけで涙を流してくれる人がいるんだって。

「君が死ぬ前に、死のうかな。」

と、君は言ったけど私はわがままだから貴方には生きて欲しい。私よりもいい子を好きになって、好きに生きて欲しいんだよ。

私と貴方は似ているからきっと貴方も私と同じことを考えているんだと思うけどごめんね、私は先に逝きたい。

 彼に気持ちを伝えたとき、

「君は俺に何を望むの?」

って、聞いていた。

「望もうと思ったらいくらでも望めるけど、何も望まないよ。」

その答えに嘘はなかった。何も望みたくなかった。私は執着したくなかったから。彼の中の私は綺麗で居たかった。望もうと思えばどこまでも望めた、一緒に死んでほしい。一緒に私と堕ちて欲しい。私を殺してほしい。でも出来なかった。私には望む勇気がなかった。

勇気を出して、私のものになってほしいと答えていたら彼は私のものになってくれたのかな。

後悔してももう遅いから、残りの後二か月は楽しくいきたい。

彼が彼女とかはもう作らないと言ったときに痛んだ胸は無かった事にして、愛されていると感じたときの苦しさは見えないように蓋をした。

 彼と私の関係に名前はない。それでよかった。彼が泣かないように。彼の心の痛みが少しで済むように。私は彼のものにはなれない。彼を私のものにはしない。それが私にできる最大限の愛情表現だから。

 私を愛してくれた彼はきっと優しいから、私を過去の存在にせず連れて行ってしまう。だから私は

「私と一緒に生きて。」

って呪いをかけて行く。

私を連れて、縋って生きて行って。

その先で私よりも好きな人が出来たら、私を過去にして前に進んでね。

わがままな私を許さないで、憎んで嫌って、思い出しながら生きて行って。

思い出の中できっと私は笑っているから、きっと楽しいままだから。


最後にこの文章を見つけてくれた貴方へ

 私は、つまらない人生とは呼び難い人生を歩んできました。

それなりに楽しく生きてきたと思います。ただ、大事な選択肢をいくつも誤って生きてしまった。私の家を壊したのは私なのかもしれません。

貴方に好きな人は居ますか?

ここまで読んでくれたってことは、私とどこか似た部分があるのかもしれません。もしかすると、【自分はどこかがおかしいんだ】と悩んでいるかもしれません。

 大丈夫、何もおかしくない。貴方は貴方です。周りが何と言おうと貴方は別の人にはなれません。少しの思いやりとわがままを持って自由に生きてください。

好きなことを好きと言って自分を隠さずに生きてください。その先できっと貴方を心から愛してくれる人やあなたが心から愛せる人に出会えます。結果がどうなっても、胸を張って生きてください。そうすればきっと最期にいい人生だったと笑うことが出来るから。

この言葉は私がずっと抱えて生きてきました。

今を苦しんでいるかもしれない貴方に覚えておいてほしいです。大丈夫、貴方は素敵な人だよ。

だからたまには息を吐いて、ゆっくり歩いてみてね。


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