前日譚、もしくはヤンデレ吸血鬼メイドが教室に乗り込んできて僕を攫った話
黒犬狼藉
僕
君は、私だ。
私は君だ。
私は君で、君は私だ。
さぁ、名乗りを上げろ申し子よ。
怨嗟を上げろ、この世界に。
この鈍重たる世界に、この煉獄たる世界に。
声をあげて泣き叫べ、この世界の無情を呪え。
我ら拝火たる血の奴隷、天秤に銀貨を乗せ我らの体躯は聖なる炎で焼き割かれる地獄の獄卒。
我らに安寧はない、我らに幸福はない。
夜に潜み、夜に笑い、夜で生きる夜の支配者。
冷酷たる殺戮者、殺戮たる罪の咎人。
罪と罰、罰と罪、生きるか死ぬか。
死ぬか殺すか、殺して死ぬか。
我ら七四たる拝火に立つ最後の唯一、生まれながらの楔にして死にゆく鎖。
すなわち、我らこそが吸血鬼(ヴァンパイア)なり。
ー1
いつからか、僕は何かが嫌いになった。
具体的な形はない、ただ僕は何かが嫌いで僕はその何かを嫌っていた。
ある日、僕は顔を洗った。
見ると嫌いな何かがあった、それは僕だった。
僕は、僕が嫌いだった。
僕は安寧とした日常が嫌いだった、変わり映えのない変わりゆく日常が嫌いだった。
太陽が嫌いだった、月光が嫌いだった。
血溜まりのような陽光が嫌いだった、眠るように消える騒々しさが嫌いだった。
何もかもが嫌いだった、だから僕は選ばれなかった。
僕は、影だ。
僕は影だ。
僕は影だ。
僕は影だ。
光の後ろにできる影だ、日常の裏にある影だ。
僕は、そんな影が嫌いだった。
ある日、僕は目の前で一人の人間が死ぬのをみた。
その人間は、僕だった。
僕が、僕が僕の目の前で無惨に殺されていた。
僕が、僕が僕の目の前で僕を殺していた。
残虐に殺していた、首をその両手で締め抵抗する体を壁に押し付けて殺していた。
彼は僕に聞いた、僕に死にたいかと聞いた、
僕は僕に答えた、僕は死にたくないと答えた。
だから僕は生きている、だから僕は生きている。
僕は生きている、僕は生きている。
生きている、生きている。
生きて、生きて。
果たしてあの日、死んだ僕はなんだったのだろうか。
あの日以来、僕は日光が嫌いになった。
あの日以来、僕は月光が嫌いになった。
あの日以来、僕は日常が嫌いになった。
あの日以来、僕は自分が嫌いになった。
あの日以来、僕は全てが嫌いになった。
あの日以来、僕は外に出ていない。
少しすれば臓物の匂いが漂う気がした、僕はお腹が空いて仕方なかった。
だから、僕は食べた。
美味しく食べた、僕はとても美味しかった。
美味しくて美味しくて、とても美味しくて。
僕の目からは涙が溢れた、僕は僕に食べられた。
僕の中から僕はいなくなった、僕は僕で独りぼっちだった。
そんな時に彼が言った、お前は一人ではないと。
だから僕は信じた、だから僕は外に出た。
夕日は、太陽は。
前に見た時よりも、もっとドス黒く。
僕にはそれが、とても嫌いなものに見えた。
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