第8話・ハミルトン西島。

ある日、俺はベルとまったりしてて、なにげなく天井を見たらベルが出て

きたのと同じような魔法陣が描かれてあった。


え?なに?また魔法陣?って思った。

で、想像したのは、ベルみたいな子がまたやって来るのかってこと。

ベルひとりで充分だよ・・・これ以上ベルみたいな甘えん坊がやって来たら

持て余すって。


「ちょっとベルあれ・・・」


俺は天井を指差した。


「あ、私と同じ魔法陣・・・」


見てると魔法陣の中央からまず、手が先に出てきた。

やっぱりだ・・・同じだ。

で、続いて頭・・・体が出てきて、そいつは逆さまのまま俺とベルの上に

ふわっと降りてきた。

驚いて俺とベビーはそいつをよけた。


そいつはゆっくりに体を回転させて俺とベルの間に降り立った。


「だれ?」


「あ、死神」


ベルがそう言った。


「どうも〜お久しぶりです、ベルベットさんお元気でした?」


井上◯水か?


「今回はベルベットさんを追いかけて来たんですよ、私」

「え?まだこの人のエナジー全部吸い尽くしてないんですか?」


「まだだし・・・そんなことできないよ」


「どうしてです?・・・通常は夢魔が男性のエナジーを全部吸い尽くしたあと、

私が来て魂を頂いていくって、そういう段取りになってるんですけどね」


「死神って?・・・なんだよ、こいつ死神か・・・」


死神って言った人は漫画とかに出てくるようなドクロ顏にフードを被って

デカい釜とか持ってるイメージとはかけ離れていた。


そいつはほんとにどこにでもいる商社マンって感じのおじさん。

頭がハゲていて、ちょびヒゲなんか生やしてて黒ブチのめがねをかけてて、

ちゃんと背広も着て身だしなみは悪くはなかった。


「私、ハミルトン西島って言います」


「ハミルトン西島?・・・え〜、それもおよそ死神の名前じゃないよな」


「いいんです、そんな細かいことは・・・」


「で?その死神が俺の魂を取りに来たのか?」


「の予定だったのですが、ベルベットさんが何もしてないようなので

肩透かしを食らってる最中です」

「本来なら、あなたはベルベットさんにとっくにエナジーを吸い取られて

干からびてるはずなんですけどね」


「俺は、健康だしピンピンしてるし、まだ死ぬ時期でもないだろ?


「あなた「佐渡 啓介さわたり けいすけ」25歳・社会人さんですよね・・・」


「そうだよ」


「あなたベルベットさんにエナジー吸い取られなくても、どっちみち明日

あたり寿命ですよ、心配しまくても」


ベルは呆れた顔をして死神を見て言った。


「ハミルトン、なに言ってるの?・・・」

「ケイちゃん、こんなインチキなやつの言うこと聞いちゃダメだよ」

「死神なんてよく間違って違う人の魂、持って行くんだからね」

「信用しちゃダメ」


「おやおや、ベルベットさん、人聞きの悪い・・・」

「魂、間違えて持って行ったのは、ほんの一万人くらいですよ?」


「やっぱり間違ってんじゃん・・・インチキ死神」

「ケイちゃんの魂は渡さないから・・・」


つづく。


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