色の無い星

ナイリル リーン テイル

色の無い星

 魔法使いにとってはその期間はあまりにも長いものである。特に見習いの魔法使いにとってはとても貴重なものなのである。すべてを飲み込む海の様な成長スピードであり、それでいてありとあらゆる色に染まりあっという間にその奥まで染みわたりそれでいてすぐに容量がいっぱいになり、一色或いは色の系統を絞らないとすぐに混沌とした秩序のないものへと変わってしまう。それはここで学んだ師匠から教わったことだ。そのことをよく知っていたのか師匠は基本的な事しか教えてくれなかった。魔法陣の構成のやり方、魔力の練り方、魔法の発動速度の早め方。基本はこれら三つのことしかやらなかった。教えてくれたものと言えば野営に使えそうな魔法一式とモノを切る魔法、そして最後に髪の毛を好きな色に染める魔法だ。私の髪色はなぜだかわからないけど生まれつき白かったのだ。なぜかはわからない。そもそもあまり記憶がない。私は物ごごろつく前から孤児院にいた。そこから孤児院で勉強をしていた。そのに時今の師匠と出会い魔法をなぜだか知らないけれど学ぶこととなったのだ。最初は苦痛だったけど結構面白いものだ。特に魔力を練ったりする練習は目に見えて成果が分かるのだ。たとえば支障が教えてくれたものを切断する魔法にこの練られた魔力を流しこむ。そうするとそれによりもの切る力、深さが上がるのだ。木々は最初は薄皮を切ることしかできなかったのにそれが今ではそこらに生えている気なら三分の一を切るまでに至る。師匠は5本くらいならどんな木でも切れるけどそれでも成長がうれしかった。

 そんな成長を日々噛みしめていたある日師匠に呼び出された。開口一言「一人でもやっていける。君には刺激が必要だ」と言われてしまった。突然のことだしすこし悲しくなった。でも師匠は案外忙しいようだ。僕の修練の時も遠くでいろいろとやっていたし、僕の古巣である孤児院にも時折顔をだしているようだ。そうか……三年間、言葉は少ないけれど楽しかったな。

 その時の夕食は少し豪華だった。次のあさ目覚めると師匠はいなくなっていた。お別れの挨拶すらなかったが。贈り物があった。一つは中に謎の何かが入ったペンダント上の瓶。もう一つはここに行けという地図であった。瓶の中身は紅い液体で満たされておりその中に謎の紙?か何かが入っている。「師匠、行ってきます。」


                ▲


 とある場所に魔女がいた。魔女の名は灰魔女。いわくその魔女に一度魅入られれば自身のあらゆる色を失ってしまうらしい。その証拠にこの世には灰色、白色の者がいる。幼少の頃の大切な記憶をなくし、そして呪物を持たされてしまい永遠にその魔女のものとなってしまうとのこと。その魔女は独占欲が強くどんなに離れていてもいずれは彼女の元に帰ってしまう。いわく彼女は子供をさらうようなものである。いわくその魔女は3の数字と月を好む、と。


 いまだにその魔女は見つからず、そしてその魔女の噂話も灰のような髪を持つ人も絶えないのである。

              ▲

 塔の上で灰色は静かに笑う。

 「私のかわいい子たち、素敵な色になって帰って来なさい。」

 「そうねあなた達がこの星がお天と様の周りを三度回ったころに一度でいいから……ね……」




   その時の夜空には星々がかがやいていた

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