七 虹花(なな こはな)

気が付くと踵が擦り減っていた。

ピカピカ輝いてまるで希望を乗せているようにも思えたあの黒い靴。

なんだか無性に涙が出た。

多分踵と一緒に心も擦り減っていた。

この一年間、面白くもないことで笑うのが得意になっていた。分かっているふりをしてうなずくのが得意になっていた。思ってもいないことを熱心に語るのが得意になっていた。

私じゃない私になるのが得意になっていた。

気が付くと私はどこにもいなかった。

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七 虹花(なな こはな) @nonname089789

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