替わり子

石原瑞稀

祖母の系図

 青森の下北郡っていう田舎に六歳まで住んでて、なんで住んでたかっていうと、離婚した母方の祖母に引き取られて一時的にそこに住んでたんだけど、祖母はそこの田舎の町内会の班長で、ポストに回覧板が回って来る。祖母がいないとき、俺が村の人から回覧板を受け取ろうと思って、男に言ったら「A(祖母の名前)さんいないの?」って言ってきて、「今はいないです」っていったら回覧板持って引き返していった。その時俺は子供扱いされて怒ってたのか、祖母にそのことを言わなかった。

 後日祖母が回覧板を持ってるの見て、なぜか俺はそれに興味が湧いて一人のときに回覧板を開いて見てみた。

 今これを書いてるのはその回覧板が今思い返してみると普通じゃなかったなって思ったからで、巷によくある田舎の怖い風習みたいのものなんかなって。だから有識者がいたら教えてほしいです。

 見開きに系図が書かれてあって、一番上に古い人の名前があって、A(祖母)の下に母親の名前、その下に俺の名前があって、その隣にも名前があったんだけど、俺の隣にある名前の苗字だけが違かった。俺は兄弟はいないし、なんで一人だけ苗字が違うのかなって思ってた。

 ちなみに俺はそこに書かれてあった苗字の方の、つまり母方に引き取られて今も本名はそれ。田舎なんで身内が見たらすぐバレると思うから言わないけど、なんでその子だけ苗字が違ったのか?


 で、こないだ離れて暮らしてる父親に手紙を送ってみた。今年大学卒業します、とか、色々適当に書いたあとで、僕に兄弟はいますかって聞いた。

 手紙が返ってきて、最後の方に謝罪みたいな文があって、多分父親は母以外とヤって子どもつくってたんだ、て。つまり異母兄弟が俺にいたってことで、回覧板に書いてあったその名前っていうのは、その子なんかなって。

 ということで、俺の中ではスッキリしてたんだけど、祖母が亡くなって青森の昔住んでた田舎の家に行って、母と遺物管理してた時に物置から巻き物が出てきて、中を見てみた。それは俺が昔見た回覧板の内容とそっくりで、だけど系図がもっと先祖まで描かれてあるものだった。

 俺がそこで違和感を感じたのは、一番古い先祖の横に、祖母を除いてほとんどの人の名前の横に、まったく苗字の違う名前が記されてあったってこと。生まれはもちろん、俺から順にちゃんと脈絡と続いてるんだけど、苗字だけ違う人が必ず一人いる。

 これは今までの俺の解釈じゃ筋が通らないな、と思った。だって全員離婚して別れた後に子供つくったってことになるし、俺の隣に名前があるのも、単なる記入ミスでは済まされないよな。

 

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