第5話 俺もパーティの一員なんだ
「はぁはぁ…くっそ、まだ奥か?」
簡単なゴブリン討伐の依頼だったはずが、いつの間にか高難度救助依頼になっている件について。
いやいやおかしいよね?この森って普通に魔物が強いんだけど、これ俺一人か?こんな真面目なの俺のキャラじゃないよ…。
俺は現在かなり森の奥までやってきている。全速力で走ってきたが、悲鳴の主は一向に見つからない。
もしかしたらもうやられてしまっているかもしれないと諦めそうになるが、もしここで引き換えさなかったら助けられていたとかなれば俺はかなり病むだろう。
ということで諦めずに探索している訳だが、本当に見つからない。
真面目に人手が欲しいところではあるが、今の俺はソロ。今までソロでやっていた弊害がここで効いてきていた。
「さすがにこの森全部を探すのは無理だぞ…。せめて後2〜3人人手があれば…あ。」
その時、俺は1つのことを思い出していた。
居るじゃないか。
俺には手伝ってくれる人が居るではないか。これまで何度も冒険者として依頼を受けていたが、毎回毎回誰かの気配が後ろにあった。ついさっきも、ゴブリンを倒している近くの木の影から気配がしていた。
…いや嘘だ。気配なんてかっこいい言葉で濁しているけど、実際は木からぴょこぴょこと頭が出ていた。
あれで本当に隠れているつもりなのか疑問だけど、そのお陰でこういった時に頼ることが出来る。
今日見ていたのは僧侶のニーノだった。
というよりほぼ毎回ニーノなのだが、そこは置いておこう。心優しい彼女のことなら、今まさに誰かを呼びに行ってくれているはず。
もし悲鳴の主が怪我をしていても、ニーノなら回復出来る。盗賊であるハルミナが来てくれたら気配察知で正確な場所も分かるはずだし、アベルが来てくれるなら戦力としてもありがたい。
あいつらは俺のことを凄いと褒めてくれ、それ故に俺はパーティを追放される結果になった。けど、同年代のパーティに比べるとあいつらは相当に優秀だ。
正直、安全マージンをしっかり取って行動していたからCランクなのであって、作戦名ガンガン行こうぜだったらBランクかそれ以上でもおかしくはない。
安全第一に考えているあいつらだが、こういった緊急の時には危険を冒してでも前線に飛び込もうとする。
全員が前世どれだけ得を積んだのか分からない程に優しく、お人好しなのだ。
そのせいで何度か怪我を負ったこともあったが、それでも見知らぬ誰かの為に危険を冒すことに躊躇がないのは本心から尊敬できる。
そんなあいつらのことだ、きっと…いや、絶対すぐに来る。
あいつらが来るまでに俺が出来ること、それは辺りの観察だろう。
どんな些細なことでも見逃さない。あいつらが最高のパフォーマンスを披露出来る舞台を整えること、それが俺のパーティでの役割だ。
「ふぅ…ちゃんと観察しろ。普段と何が違う?」
森の変化に集中する。
足元の小石、木々のざわめき、異様な雰囲気、高い魔力濃度。
その時俺は気づく。風が吹いていないにもかかわらず木が揺れている?足元を見れば、小石がかたかたと振動している。
走っていて気が付かなかったが、これは…。
「地震?…いや、揺れの長さ的にまるで巨大生物が動いているかの様な…。」
そしてタイミングの良いことに、俺はある音を聞いてしまった。
ドオォォォォォォォォォォォォン
その小さな爆発音に似た何かは、ちょうど俺が向いている方向から聞こえた。
異常な魔力濃度の濃さ、地震の様な揺れ、それを引き起こした者の正体がこの先に居る。
自分でも気付かない内に冷や汗が垂れるが、それを袖で拭って気合を入れる。
異常の正体、ならば進む意外に道は無いだろう。俺だってあのお人好しパーティの一員だったんだから。
「…よしっ」
頬を小さく叩いてから、俺の足は森のさらに深くへと進んで行った。
◆【side ニーノ】
「アベル!ハルちゃん!タクトを助けて!!」
「よし行こう。どこだい?」
「タクトがやばい感じ!?さすがに私達じゃ荷が重くない?」
私こと僧侶ニーノは急いで街まで戻って来ていた。いつもの様にタクトを見守っていると、突然森の中から悲鳴の様なものが聞こえたのだ。
かなり小さかったので遠くだと思うが、それを聞くとタクトは何の躊躇も無く森に入っていった。タクトかっこいい。
──おっと危ない。
慌てて私もついていこうとしたけど、森の奥にある濃い魔力を察知したことで踵を返して街に戻ってきたという理由だ。
急いでそのことを二人に伝えると、アベルは即答で助太刀に行くと回答した。
ハルミナも最初はタクトが負けているのではと心配そうだったが、まだ魔物を確認したわけでは無いので分からないと伝えるとすぐに行こうと行動し始めた。
二人ともタクトのことが大好きなのでタクトの身を案じているけど、かくいう私もタクトのことが大好きなので何も言えない。
一刻も早く助けに行こうと私達はホームを飛び出した。
街の冒険者ギルドに報告した方が良いのではないかとも考えたが、あの尋常ではない魔力の濃さから察するにかなり強力な魔物であることは容易に想像できる。
そんな存在が森に出たかもしれないと報告したら、事情聴取などで長時間拘束されるだろう。
それで済めばいいが、下手したら森に立ち入ることを禁止されたりそもそも強力な魔物が出たという話すら信じてもらえない可能性もある。
報告して、それで調査員が出れば御の字。最悪長時間の拘束だけされて調査員は出ないなどとなったら時間の無駄である。
そんなリスクを取るよりも、自分たちで森に入ったほうがまだ助かる確率は高いと考えた。
なので、冒険者ギルドには事後報告になるが仕方がない。私たちは一刻も早くタクトと悲鳴の主を助けたいのだ。
すぐに準備して門から街を出る。徐々にタイルから土の道に変わっていくのを感じながら、タクトが森に入った地点まで急ぐ。
やがてその場所に到着すると、アベルは躊躇うことなく森に入っていった。私とハルミナもその後に続いて入る。森の中は鬱蒼としていて、明らかに普段の森では無かった。
少し進むと、魔物が沢山死んでいる場所に辿りついた。辺りには小さい石の様が散乱しており、この小石によって倒されたものだと推測できた。
この辺りだけ魔力濃度が薄くなっており、ハルミナ曰く魔力を辿って察知する気配察知は逆に探知しにくいそうだ。
気配察知は2つの種類があり、1つは近距離の察知に長けた物。
これは格闘家などが持っていることが多いらしいが、ハルミナの持っているものとは違うため割愛する。
2つ目がハルミナが持っているもので、広範囲の察知に長けている。だが、細かい動きなどを察知することは難しいらしく、どこどこに何かがいる程度しか分からないとのこと。
それぞれにメリット・デメリットがあるらしいが、今回は広範囲の察知で正解だったといえる。
少し奥に移動すると魔力濃度も濃くなったので、そこで再び探知してもらう。
近くには居ないみたいだけど、森の奥で二人の人間の気配と、そこだけ穴が空いたかの様に真っ黒に塗りつぶされたナニカが居るらしい。
幸いタクトらしき気配はまだナニカと接敵してはいないが、もう1つの気配は徐々に距離を詰められているとのこと。どちらも救うために、急いで森の奥に足を進めた。
この先に何が待っているのか、心配を抑えながら。
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どうも、ゆーれいです!
最近は寒くなってきましたね、秋はどこに行ったんでしょう。私は絶賛風邪を引いております!
久しぶりに風邪引きましたけど、キツイですね。喉がやばいです。頭もポワポワします。
でも寝れないんですよ!加湿器が無いので寝たら喉が死にます。生き殺しですわ…誰か助けて。
そんななので誤字があるかもしれませんが…許して♡
あ!そういえばこの間★レビュー貰ったんですよ!本当にありがとうございます!とても励みになります!
てことで終わりです。ぜひぜひ作品のフォローと★での評価お願いします!
それではまた。
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