俺を追放したパーティがずっと後ろから見守ってくるんだが…〜必死に誤魔化してるけど見てるの気付いてますよ!?〜

ゆーれい

第1話 追放って本当にこれで合ってる??

「タクト、現時点を持ってお前をパーティから追放する!」


「……な、なんだってぇぇ!!」



【悲報】冒険者タクト、17歳。5年間一緒に旅をした仲間達からパーティを追放される。


 …と、ふざけてみたが、どうやら俺はパーティを追放されてしまうらしい。びっくり。


 俺はこのパーティでめちゃくちゃ頑張ってきた。掃除、洗濯、料理に荷物持ち!さらには戦闘までこなす腕前!


 こんな感じで結構頑張っていたつもりだったのだが、それでも力及ばずだったか!


 …まぁそんな訳はない。なぜ俺がここまで冷静に話せているのか…それは昨日の夜、部屋の前を通りかかった時に話が聞こえてしまったからである。


 少し思い出してみよう。


 まず昨日、夜中にたまたま目覚めてしまった俺は、外の空気でも吸おうと玄関に向かっていた。そしてその時、パーティリーダーの部屋から話し声が聞こえてきたのだ。


 時刻は真夜中。不自然だと思った俺は部屋の扉に耳を当て、話を聞いてみることにしたんだ。


 すると…



「…じゃあ、タクトは…」



 どうやら俺の話をしていたらしい。しかも声からして、深刻な話っぽかった。



「そうだな…。追放、という形が良いだろう。タクトの才能は僕らの身に余る。もっと高ランクのパーティに所属するべきだ。」



 この時本当に素で「えっ」って声が出ちゃったよね。才能有りすぎて追放とかそんなことある?



「でもぉ…タクトと離れるのは寂しいよぉ…。」


「そんなの皆同じだよ!でも今のままだと、私達はタクトのお荷物以上になれない。まだ若い彼の才能は、もっと良い場所で使わないと。」



 …そう思われてたんだって、この時はちょっと傷ついたかな。俺は皆のことをお荷物だなんて思ったことは一度もない。


 例え俺に才能があったとしても、その才能を見つけて磨いてくれたのは他でもない皆なのだ。感謝こそすれ、邪魔だなんて思うはずがない。



「君だってまだ若いだろう。僕が言うのもなんだけど、本当にタクトを追放するってことで良いのかい?本当に『わざと嫌われることで復讐心でさらに力を上げてくれるかも…』なんて言った僕のセリフじゃないけど。」


「うぅ…タクトに嫌われたくないよぉ…」


「私も辛いけど、皆で見守ろう?きっとタクトなら分かってくれるよ。」


「ぐすん…うん。ごめんねタクトぉ」


「では心苦しいが、タクトは追放。他のパーティでその才能を磨いてもらおう。」



 的な会話をしていた。


 俺は正直このパーティが良かったし、その夜はモヤモヤして悩んでた…けど、そこまで俺のことを考えてくれるのなら、その意思を汲みたい。


 そんなことを考えていたら、俺がぼーっとしていた事らしい。それに気付いたパーティリーダーである、アベルが俺に指をさして言った。



「何を呆けている!話を聞いているのか!」



 で、さっきから思ってたんだけどこれ本当にアベルで合ってる?流石に嘘が下手過ぎると思うんだが?普段声荒げることなんて滅多にないのに、急に大声出したら喉痛めるよ?



「まぁまぁアベル。タクトもいきなりで困ってるんだよ。」



 そして僧侶であるニーノ。君も追放する気ある?めっちゃ庇ってくるけど、それ今から追放する人にはやらなくない??



「ハヤクデテイケゴクツブシガー」



 …極めつけは君だよ大根役者。この子は盗賊シーフのハルミナ、素直で嘘が付けない子なんです。許してあげて下さい。



「えーっと…」


「口応えするな!さっさとホームから出ていけ!荷物をまとめろ!お金もちゃんと持ってけ!」


「優しさが隠しきれてない!!」


「あぁ!とっても心配!怪我しないでね?何時でも帰って来ていいからね?」


「追放なのに帰ってこれる訳ないだろ!」


「ヤーイヤーイアホー。バーカ。」


「それただの悪口!!」



 追放宣言から既に1時間。こう言うのってサクッと済まされるイメージなんだけど!?なんで俺は追放されたパーティの漫才を見てるんだ?


 とりあえずこのままじゃ終わりそうに無いので、無理矢理話をぶった切ることにした。



「あの…もう行っていいか?」


「早く行け!暖かい格好で行けよ!」


「だから優しさ!!」


「なんでそんなに冷静なのぉ?も、もしかして悲しくない?うぇぇぇん!タクトのバカぁ!」


「ニーノ!?ごめんめっちゃ悲しいから!正直泣きそうだから!」


「キヲツケロヨー」


「もう演技ですらないじゃん!」



 うーん。追放って本当にこれで良いのだろうか。ギルドとかで見かけた時はもっとピリピリしてたんだけど…。追放した側は迷惑そうな顔してたし、された側は泣きそうな顔で縋り付いてたんだけどなぁ。


 まぁそれは今考えても意味が無いので、部屋に戻って荷物をまとめた。ここで『荷物は全部置いてけ。』とか言わないの、まじで追放とは言わないよなぁ…。


 荷物は剣と食料、衣服だけ持っていくことにした。レアな素材は置いていこう。一方的に追放してくる奴らならいざ知らず、信頼している仲間にあげるなら構わない。


 それに俺は、追放されても皆はずっと仲間だと思っている。多分皆もそう思ってるだろうし、実際なんか重いから自意識過剰ではない…はず。


 荷物をまとめて部屋を出る直前、俺は部屋に向きなおって深呼吸した。この部屋には本当にお世話になった。


 日常生活から、大怪我した時は皆に看病してもらったし、アベルと一晩中飲み明かしたこともあった。ニーノが甘えて入って来たこともあったし、ハルミナが目覚まし代わりに飛び込んでくることもザラにあった。


 ま、これでこの部屋ともお別れだけど、この優しいパーティなら…もしかしたら戻って来たりするかもな。


 なんて、まるで長い旅に出るようなセリフを心の中で呟いてから、部屋の扉を閉めた。





 ◆


「タクト、大丈夫?忘れ物はない?」


「オカンか。追放されたってのに最後までそんな気分無かったな…。」


「さっさと行け!元気でな!」


「一応言っておくけど、お前嘘付くの下手だから辞めた方が良いぞ。」


「モウカオモミタクナイネ!」


「その割に見送りには来てるんだな。って違う!普通追放に見送りなんて居ねぇんだよ!!徐々に毒されてるな…さっさと行くか。…………またな。」


「おう、またな」


「またね!」


「マタナー」


「…またって言ってるし…。」



 本当に調子狂う奴らだな〜。まぁそう言うところ嫌いじゃないし、むしろ好きなんだけどな。


 俺は追放されたという事実に似合わず、パーティメンバー全員から見送られる形でホームを後にした。



「さて、これから何しようかな〜。あいつらにもらった休みみたいな物だし、色んな経験を積んでみたいよな〜」



 これまで通り、冒険者を続けるのも良いだろう。一変して商人とか、料理人として店を開いてみても面白そうだ。なんなら田舎に越して、スローライフと行ってもいい。


 時間はたくさんあるし、世界中を旅してみるのも良いな。あいつらが言ってた様に、高ランクパーティに入ったり…なんなら作ってみたり!?


 …そう考えるとワクワクしてきたな!よ〜し、お金はいっぱい貰って来たし、色々挑戦してみることにするか!


 急に振って湧いた修業期間。色々な経験に胸を躍らせる俺は、まずは宿屋に行こうと歩き始めた。


 …が、新体験に心躍らせる俺は気付かなかった。スキップしながら歩く俺を見つめる、3つの影があることに。



 ────────────────────

どうも、ゆーれいです!


新作!私は後1000のアイデアを残しています!…嘘です。けどアイデアは色々あります。未だに何も完結させていないので増やせませんが。


…え、この作品は増やして良いのかって?うるさいうるさい。評価がないとやってられないんですよ!モチベがないと飽き性な私は動かないんですよ!燃料無しで車が動くと思うなよ!!!


てことでモチベ上げるために、フォローと★での評価お願いします!!


それではまた


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