meet again

Loose~ meet again~再会の二人


雨がひどい日だった。


梅雨だから仕方ない。



雨が斜めに吹き込んでくるものだから、傘をさしても守れてるのは頭とせいぜい肩ぐらい。


はじめのジーンズはツートーンに色が変わってしまい、水を吸って重くなり、歩くことがひどくダルい。



今は車道が赤信号で車が止まっているからまだマシだが、また信号が青に変われば車が走り出し、水溜まりが歩道に届くように跳ねる……と思うとダルい。



家に帰るのも……ダルい。



パッと信号の色が変わった。


しかし変わったのは信号だけでなく、聞こえる雑音も変わった。


静かになったのではなく、騒音に包まれたのだ。



クラクションが鳴り響く。


何事かと驚いて、創は立ち止まった。


青に変わったのに車の行列は一向に進まない。


一番先頭の車が未だ発進していないのが渋滞の原因。


その助手席の扉が開いて、一人の女が降りてきた。



「おい!!待てって!!おい!!サッッ──」



一瞬、車から聞こえた男の声は扉を閉められたことで途絶えた。



女は傘もささずに歩くから、一瞬にしてズブ濡れになった。



そして女は創と目が合い、立ち止まった。



「……サクちゃん?」



それは長い間、会っていなかった従姉妹の朔良さくらだった。



「……ソウ?なんで…」



本当に驚いたように呆ける朔良の後ろから、大きな声が飛んだ。



「朔良!!」



先ほどの男が車を一度寄せてから降りてきたらしい。


男は傘をさして遠くからこちらに向かって走ってくる。


朔良もそれに気付いて困ったようにソワソワし出した。



「ソウ!!あ…あのね、その、今…」



創は朔良の言葉を待たずに彼女の手を取った。


その時に落とした傘も拾わないで朔良を連れて走り出した。


走る事で蹴ってしまう水溜まりが大きく跳ねて創達を濡らした。



ぶつかる雨で視界も定かではないが、創は朔良の手を握りしめて早く走った。


雨のシャワーは夏の気だるさを吹き飛ばすようで爽快に創と朔良は駆け抜けた。



今、思い返しても創は何故あのとき朔良を連れ出したのか……どうにもわからなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る