第2話 -1000m上空にて
【ナノアロルビア鏡島】は、1980年、アメリカ合衆国の独占領土であるアロルビア半島の上空1000m付近に突如として現れた、空に浮かぶ巨大な島である。
ナノアロルビア鏡島は、地表面がアロルビア半島の地上方向に向いており、まるで鏡に映されたアロルビア半島の様であることから、この名が付けられた。
空雲透過天望鏡を用いてナノアロルビア鏡島を観察したところ、鏡島はアロルビア半島と全く同じ弧状をしており、更に右腕が欠如している黄色人種が生息していることが分かった。
右腕が欠如している黄色人種──通称"欠如民族"は、アロルビア半島に住む黒色人種の民族と、右腕の欠損と肌色以外の身体的特徴がほぼ一致しており、時折こちら側に視線を向けることがあった。
2040年、アメリカはこれを世界全体の問題として捉えて国際会議を開き、ナノアロルビア鏡島への核使用を本格的に検討した。
しかし、学者の多くは鏡島領域での重力関係、アロルビア半島への被害などを考慮し、核使用には反対の意を示した。
アメリカは、アロルビア半島より北部に位置する蝦夷地へ協力を仰ぎ、鏡島の解析を進めた。
それから、欠如民族は急激に人口を増やし、鏡島中心部にて核らしき物が観測された事から、
2056年、9月7日。ナノアロルビア鏡島に合計3つもの特攻型原子爆弾が打ち上げられた。
その2日後、定期調査の為に訪れたアイヌ人によって、アロルビア半島に住む民族全員の左腕と、約22万人の舌が欠損していることが確認された。
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