第26話
「いや。実は、母さんが生前、大切な預かり物をして……それをあの部屋に納めてあるから、開かずの間にしたんだよ」
大切な預かり物……。
由佳里ちゃんが言っていた、骨董品の事だろうか。
「……もう、開けていいの?」
「ああ。その大切な預かり物は、渡すべき人に、渡す時が来たからね」
そう言って穏やかに笑う父さんの横顔を見つめながら……。
無意識に指で触れてしまう、ポケットの中の秘密。
渡すべき人が、誰なのか……。
金色の鍵の存在を知っている今となっては。
それを父さんに訊ねる意味は、きっと、無い。
「ふうん」
俺はただ相槌を打ち、榊家の長い廊下を無言で歩いた。
その時、俺が悟った通り。
修哉が深山家に来たその日、父さんが彼に『遺品』として手渡したのは。
金色の小さな錠前で封じられた、一冊の古い日記帳だった。
託された遺品【完】
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