第22話
そこには、資材課の林主任が立っていた。
身長はほぼ私と同じぐらいで、ちょっと太り気味の38歳、二児のパパ。
日頃は朗らかな顔をしている事の多い林主任が、今は、凄く申し訳なさそうな顔をしている。
「食事中ゴメンね。実は、ちょっとお願いがあって」
「はい、なんでしょう?」
「急で悪いんだけど、明日の忘年会の司会、引き受けてくれないかな?」
「えっ、司会って……確か佐々木さんでしたよね?」
「そうだったんだけどさ……なんか、子供さんが怪我したみたいで。急遽休んじゃってるんだよ。忘年会も出られないって」
「怪我ですか……それは大変ですよね……」
確か、資材課の佐々木さんの子供は、まだ小学校の低学年だったような…。
飲み会や残業の時は実家のお母さんが子供の面倒を見てくれるって言ってたけど、さすがに、怪我をした子供を親に押しつけて忘年会なんて出ていられないよね。
「俺が代理で、って思ったんだけど、うちの課長が安原さんに頼めないか、って」
確かに、忘年会の司会やアシスタントは、役職に就いていない女性社員が担当するのが慣わしみたいなものだし…。
マスコット的存在の矢野ちゃんは、ビンゴゲームのアシスタントと上司達とのカラオケのデュエットで忙しいだろうし。
目立つことはあまりしたくないけれど、総務課としては引き受けないわけにもいかない。
……というか、考えようによっては、むしろ、司会の方が気が楽だったりして…。
上司へのお酌も結構気を遣うし、その上、酔っぱらいの説教を延々聞かされたりするのは飲み会の常だし。
酔うと決まってセクハラ紛いの言動をする、厄介な男の先輩が一名いるし。
司会の仕事を盾に、そういうシチュエーションから遠ざかる事だってできるかもしれない。
ストーブのオカルト現象の所為で、忘年会の司会を引き受ける気持ちの余裕なんて本当は皆無なんだけれど、忘年会をサボる事ができないなら司会業に徹している方がマシだ。
「解りました。お引き受けします」
私は、困惑顔の林主任に向かい、笑顔を浮かべて頷いた。
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