第17話教祖と誘惑

誘惑が部屋をでて、向かった先は教祖がいるはずの部屋だった。


「おーい。アヤナ?開けてくれ〜」


部屋をノックするが中からの反応はない。

誘惑がドアを動かすと


「開いた?」


普段は閉まっているドアが開いていたことに違和感を感じながら部屋に入ると部屋は誰もおらず、人が生活している感じもしなかった


「アヤナ〜?もしかして出かけてるのか?だけどアヤナが外にでたがるとは思えないんだよな〜」


教祖にされているアヤナの性格を考えながら部屋を探索するがロッカーには服すら入っておらず、棚も確認してみたが特に入っていなかった。


「そういえば、昔読ませてもらった漫画にはベットの照明が地下に繋がっている階段を開くスイッチになってたかな?」


たまたま思い出したので、実際にやってみたらいきなりロッカーが動いて下に続く階段が出てきた。


「マジで〜!?流石に予想外だな〜」


誘惑は部屋の扉を閉めてから固定化の魔法をかけて動かなくし階段を下っていく。


「それにしてもこんな場所作った記憶ないんだけどな〜?私もボケたかな?」


階段は相当長いらしく2分ほど降ると大きな広間に出た。

あたりには青い花が咲いており、視界の先には


「アヤナ!」


魔法陣に囚われているアヤナを発見し、急いで駆けつけるが


『侵入者発見、排除します』


どこからか音声が聞こえるとともに上から二体の機械が落ちてきた。


「なんで、最初に侵略してきた世界が残したものがここにあるんだよ〜!」


誘惑は機械の攻撃を掻い潜りながら機械のターゲットを魔法でそこら辺の柱に向けるが、すぐに自分にターゲットが戻ってしまう。


「この魔法じゃ無理か」


それでも、何回かそれを繰り返しながら魔法陣に近づき魔法陣に触れるが触れた瞬間体が弾かれる。

弾かれた衝撃で壁にぶつかり、その隙に機械達の攻撃がとんでくるが


「邪魔」


誘惑に攻撃が当たる瞬間誘惑が機械達の攻撃先から消える。

機械達は困惑しながらも侵入者がいなくなったので、戻ろうとするが


「やっぱこの程度か」


機械達が声のした方を向こうとするが途中で動きを止める。

誘惑が何もなかった場所から姿を現すと機械達の動力源を服の隙間から出ている蛇のような尻尾で貫いていた。


「ふぅー。とりあえずアヤナを回収しないと」


誘惑がアヤナの方に向かう。

向かっている最中あたりに咲いている青い花が黒くなっていく。

魔法陣の前につくと誘惑は


『邪魔』


そう言って?尻尾で貫き破壊する。

その時魔法陣に尻尾を弾き飛ばされそうになるが、無理やり貫いたため、尻尾からは青い血が垂れ出てくる。


「うへぇ、気持ち悪る」


自分の尻尾の状態を見たら少し気分が悪くなった誘惑だが、魔法陣が壊れたことで拘束が解けたアヤナが倒れそうになっているのを見て地面に着く直前にアヤナをかかえた。


「大丈夫だった?お嬢様?」


アヤナを抱える誘惑だったが、アヤナは気絶しているのか反応はない。


「それにしたって、この組織が信仰してるのがあの神とはね。たまたまなのか、それとも狙ってやったのか。まあ、この組織は潰すか。アヤナにこんなことしてくれたし」


誘惑は改めてアヤナの状態を見る。

長い間拘束されてたのか手首や足首には鎖の跡がついており、体は最後に見た時に比べてひどく痩せている。

アヤナの体にある魔力もひどく澱んでおり、このままでは今後の生活に異常が出てしまうほどであった。


「感覚的に魔力をアヤナに与えて、アヤナに神を降ろす形を取ろうとしたのか?だったら私達の元に来たのも分かるし」


誘惑とアヤナは結構長い関係を持っているが、お互いに深くは干渉しておらず、アヤナがどうして私の管轄に落ちてきたのかも誘惑はしらない。


「とりあえず、クズ男の元に向かうか」


アヤナの抱え方を変えて出口の方に向かうが目の前に大量の機械が落ちてくる。

機械達は地面につくと同時に誘惑に持っている武器で攻撃を仕掛けてくるが誘惑は攻撃と攻撃の隙間を通り抜けて出口に向かう。


「馬鹿正直に戦ってられるか」


黒くなった花から魔力を吸い上げて機械達と出口を隔離するように魔法を放つ。

そのまま魔法による隔離が終わる前に出口に入ろうとしたが


『……』


目の前が歪み巨大な機械が現れる。

誘惑はそれを見るとアヤナを囲うように大量の魔力を使って障壁を展開する。

展開が完了した瞬間


『◻︎◻︎』


巨大な機械から音が出ると同時にアヤナ以外のものが横に切断される。

それを確認した巨大な機械は胴体が横に切断された誘惑に近づき


『……大丈夫だな、蛇よ』

『な訳あるか〜』


体を持ち上げると誘惑の体が再生されていく。

誘惑は巨大な機械に抗議をすることを考えたが今はそれよりアヤナの安全の確保の方が優先だった。


『蛇よ、その子供は?』

『あ〜「あーー…はあ、私の友達だよ」

『そうか。蛇が守ってなかったら切ってしまうところだった』

「何度目になるか覚えてないけど、二度と私の前でアレすんなよ〜。私最弱だからな〜」

『鷲よりは強いだろう』


誘惑は巨大な機械の言葉を無視してアヤナを抱える。


「それで、何しにきたんだ?」

『カジキが暴走してな、主人様に起こされた』

「マジかよ〜、カジキの相手なんてしたくないっての〜。で、場所は?」

『ここだが?』


誘惑はその返答に頭を抱えたくなるが、名案を思いつく。


「なあ、二手に別れない?ここ、二つの建物あるからさ。私はこの建物で、機械はもう一つの建物お願いしていい?」

『理解した。では、任せたぞ蛇』

「その言葉使い面白いね〜」


機械は誘惑の言葉に特に反応はせず、歪みを出すと消えていった。


「流石にこの建物にはいないだろ〜。とりあえずあのクズ男殴りにいくか〜」


そうして会議室に飛び込む誘惑だったが


「なんで、カジキがここにいる〜!?」


自分の名案を恨んでいるのだった。

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