第10話 学園「クルミナ」

俺たちにそう言ってきたのはオレンジの腰まである髪に、百八十はあるだろう身長の女性。赤目と金目を持つオッドアイの持ち主。陛下が言っていたオッドアイの持ち主の一人はこの人だろう。


 「これから五年間よろしくお願いします」


 「こちらこそ五年間お世話になります」


 ステナリアとの挨拶を交わすと俺にも手を向けてきた。


 「ディア卿も五年間よろしくお願いします」


 「よろしくお願いします」


 俺がそう言って出された手を握るとロレアス学園長は「では、行きましょう」と言って校舎の門を開けた。俺たちは門をくぐった。


 門をくぐると中ではとても大きく丸い練習場らしきところでたくさんの人が剣や槍を持って戦っていた。剣が衝突する時に起こる大きな音、槍が衝突する時に起こる鋭い音が俺たちの耳に入ってくる。


 「あれは我が校の第一訓練場です。剣や槍、斧などの接近戦専用の訓練場です」


 第一訓練場で訓練している学生たちを見てスペルタは「ほぉ、中々なものだな」と顎に手を当てて言った。それにロレアス学園長は笑いスペルタに提案した。


 「参戦していきますか?」


 「えっ!いいんですか?」


 「えぇ、あの子たちにも刺激になるでしょう」


 ロレアス学園長の言葉を聞いたスペルタは物凄い勢いで第一訓練場に走って行った。それにロアノも着いて行った。


 俺たちの護衛は・・・?まぁ、学園内なら安心か。


 「次は第二訓練場に行きましょうか」


 ロレアス学園長の言葉に俺たちは頷いた。俺たちが第二訓練場に向けて歩いていると第一訓練場から叫び声と笑い声が聞こえてきた。学生たち南無・・・


 「訓練場は授業で使いますが、放課後などの自由時間に使うこともできますのでお二人も入学したらぜひ活用してください」


 「はい、その時は」


 第一訓練場から歩いて五分経った時先ほどの第一訓練場のような物が見えて来た。


 「ここが第二訓練場です。魔法専用訓練場です」


 第二訓練場からは音が全然聞こえない。先ほどから煙などが立つほどの魔法を使っているのに。


 「気づきましたか?第二訓練場は遮音結界と言う魔法を使っています。魔法は結構うるさいですからね」


 「もう一つは?」


 「!流石ですね、もう一つの魔法は収束魔法「モクアウト」と言う魔法で発生した煙を消すことが出来ます」


 ステナリアは「凄いですね!」と褒めていたが俺はそこに疑問を持った。


 「でもこれじゃ、訓練にならないんじゃないですか?」


 「ん?なんでですか?邪魔な煙がすぐになくなるんですよ」


 俺の言葉にステナリアが反論するとロレアス学園長は・・・


 「ははは!!!凄いなディア卿は!ステナリア王女殿下、ディア卿の言っている意味分かりますか?」


 左手を腰に当てながら大きく笑い、右手で俺の頭を撫でた。


 「い、いえ、分かりません・・・」


 「ディア卿分かるかい?」


 俺はステナリアを見て答えた。


 「実戦では煙が立つのは当たり前。現に今も魔法が衝突する度に煙が立っている。煙が立つ度に「モクアウト」を使っていれば殺れる」


 「更に言うと「モクアウト」は範囲を指定して使う魔法だ。それに「モクアウト」の範囲は魔力量に比例しかなりの魔力を使うので使いづらい魔法なんですよ」


 ステナリアは俺とロレアス学園長の説明を聞いて「へぇ~」と言っていた。これは分かっているのか?


 「それにしてそこまで分かるなんてディア卿は実戦の経験でも?」


 「いえ、家で試合などを見ていたくらいで実戦の経験はないです」


 俺がそう言うとロレアス学園長は少し昔を思い出したような顔をした。そして笑いながら言った。


 「ふふっ!このことについて指摘されたのはディア卿で二回目だよ」


 「二回目?」


 「えぇ、ちょうど四年前一人の男子にも同じことを言われたんですよ」


 それを聞いたステナリアは目を輝かせてロレアス学園長に聴いた。


 「それって!!」


 「えぇ、これから行くところに居る人ですよ」


 そう言ってロレアス学園長はそのこれから行く所へ行くために歩き出した。それにステナリアはちょこちょこと着いて行った。俺はその場でため息を吐いて二人に着いて行く。


 歩いていくと二手に分かれていてロレアス学園長は右に曲がったので俺たちも右に曲がる。


 そしてそのまま歩いていると左には「教員室」そして右には・・・


 「着きましたね、ここが目的地の生徒会室です」


 ロレアス学園長は生徒会室の扉を叩き、自分の名前を言った。そして扉の向こうから俺の苦手な声が聞こえた。ステナリアは凄くワクワクしていた。


 そしてロレアス学園長が生徒会室の扉を開けた。

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