第36話

いないとは分かってたけど、言った通り。




出勤して、デスクに入ったらいつもは掛からない声が、珍しく…。





"柳原さん、澄田社長から伝言。



今すぐ、社長室まで。



って。"




会社で声が掛かるとは、思ってなかった。


今までこんなこと、一切なかったから。








『どうぞ。』



「失礼致します。」




『こっちに来てくれる?』



「…」



彼の手元には、うちの部署が提出した、書類。


…でも、私は責任者じゃない。







『…李。』



やっぱり、呼び止められた。


振り返らずに、こう言った。




「明日、お時間ありますか?」



『仕事を終えてからなら、李の家で…』




場所は私が指定した。











『来てくれてありがとう。


…ゆっくり話そう。座って。』

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