第25話

澄田、の名字なら全国探せばいくらでもいる。


ただ、澄田 朝日と言う名前は…。






『李ちゃん、付いてる。』


「…え?」



朝日さんが私達の横を通り過ぎる時、彼は私の視界をこの男で一杯にした。



至近距離で拭かれた、口元に付いたソース。





「ひ…とが見てる、」



『けど今の行動はナイスだったでしょ。』



顔を合わせなくて、済んだ。



「お手洗い…」




行ってらっしゃーい、って呑気に手振ってる。



私はそれに返さずに、自分でも分かるくらい顔を顰めた。







『…李』






「あさ…、こんにちは。」



『良いよ、ここなら。朝日って呼んで。』




何がいいの?


この角を曲がれば、すぐそこに家族がいるのに。




「お久しぶりですね。」



『うん。元気そうで安心した。


会社でも中々会わないから、……李不足。』





『あの人、この間の人だよね。食事をしに来ただけ?』



「そうです。」


『こんな早朝からか…』



現在、7:00。


同い年の男女、さらに一度関係を持った男女…



朝帰りの途中だって、この人は勘づいている。





『…明日あすの夜、会えない?』



「え、いや奥さんは、」



『本当は、出張の予定だったんだ。でも後日に変更。…だから、会いたいんだけど。』





「朝日さ、」










『俺との予定が入ってるんで、無理っすね。』

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