第2話 目の前の光
シンが目を覚ますと、透き通る青空がどこまでも広がる不思議な空間にいた。体は軽く、現実の重みが全く感じられない。周囲には雲が漂い、静かな安らぎが広がっていた。
「スッー、、、。強く殴られすぎておかしくなった?」
シンがそう呟いた瞬間、目の前に白い球体が現れた。ぼんやりとした光を放ちながら、球体は浮かんでいる。
「ようこそ、シン。君をここへ導いたのは私だ。」
その言葉にシンは驚いて、後ずさりしそうになる。だが、足元がふわりと浮いていることに気づき、焦りながらも球体に目を向けた。
「…!?幻聴まで聞こえてきたけど!? オレ、ついにイカれた?」
シンは自分に言い聞かせるように独りごちるが、球体は淡々とした口調で続ける。
「シン、これは幻覚でも幻聴でもない。私は『世界の調整者』。数多の世界を見守り、秩序を保つ役割を持つ存在だ。」
球体の声は冷静で、どこか温かみさえ感じられる。しかしシンは眉をひそめ、疑いの目を向けた。
「調整者…?まじで異世界ってあるんだな。」
シンが戸惑いを隠せずにいると、調整者は静かに続けた。
「驚くのも無理はない。だが、今、私は君に頼みたいことがあってここへ招いたのだ。」
その言葉に、シンは興味を引かれるように耳を傾けた。目の前の現実をまだ完全には受け入れられないが、調整者の声にはなぜか説得力があった。
「ある異世界で、女性たちが不当に虐げられている。その世界では、性別による偏見が根深く蔓延しており、女神たちは人間がこのまま滅びの道を歩むことを危惧している。」
調整者の言葉が終わると同時に、シンの心にざわめきが走った。異世界で女性が虐げられているという話は、何とも現実味がない。しかし、女の子が大好きな自分にとってどうにも放っておけない話でもあった。
「…それを何とかしたい気持ちは分かるが。俺と何の関係が?」
シンの声は少し低く、そして真剣だった。調整者は穏やかに続ける。
「君に、その世界に行ってほしい。直接、女神たちは干渉できない。だから、君のような魂を送り込んで、現地での秩序を立て直してほしいんだ。」
シンは自分のことを見つめる調整者に戸惑いの表情を浮かべた。自分が異世界で何かを成し遂げられるとは到底思えなかったからだ。
「オレなんかで大丈夫なのか?正直、ゲームしか取り柄のないオタクだぞ…。」
シンの自嘲気味な言葉に対し、調整者は優しく語りかけてきた。
「君には他者を守るために命を投げ出す心がある。それが、今の異世界に必要とされているのだ。」
シンは調整者の言葉に、一瞬だけ自分の行動が何かの役に立つのかもしれないと思ったが、すぐに首を振った。
「いや、でもオレ、そんな大きなことやれる自信ないし…。」
シンは苦笑いを浮かべながらも、拳を強く握りしめた。自分に力がないことを改めて痛感し、悔しさが胸に広がっていく。しかし、調整者は言葉を重ねる。
「シン、君がそう感じるのも無理はない。今の君には確かに力がない。しかし、もし君が使命を受け入れるなら、私から一つだけ力を授けよう。」
シンは驚き、顔を上げた。まさか、自分がここで力を得る機会を与えられるとは思っていなかった。
「力を…くれるのか?チートみたいな奴?」
半信半疑で尋ねるシンに、調整者は静かに頷いた。
「そうだ。君が異世界で戦い、人々を救うために使える力だ。どのような力を望むか、君自身の意志で決めてほしい。」
「それなら、、、」
シンは目を閉じ、深呼吸をした。そして、自分が過ごしてきたゲームと共に戦った天使達のことを思い出した。
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