新幹線になっても、やっぱり太宰治。

「太宰治が新幹線になったら…」という突飛極まりない発想の作品。

 設定は理不尽さ極まりないが、だからといって遠慮せずその理不尽さをふんだんに押しつけてくる。
 それがまた読んでいて面白い。
 幼稚な表現も使い、読者が理解する前に話を進めてしまう。
 お陰で最初から笑いが止まらない。
 怪作特有の変な世界観を笑いを交えて表現しており、読んでいて楽しい。

 そして、これが読んでいてちゃんと「太宰治」になっている。
 どこか達観した大宰の人間観、そして他者を傷つけてしまった自分への嫌悪がコメディ的な物語の中にきちんと組み込まれており、その寒暖差がまた上手い。
 
 また読みたくなる迷作。素晴らしかったです。