69.コミケ案内(2)
第69話
97年の夏にコミケはビックサイトへ移った。
ここは冷暖房、交通網完備で、売店、レストランが完備されており、
晴海よりずっと待遇はよかった。予算が足りなくなればATMでもおろせた。
そして今年の冬の参加者は35万人を越える見通しだ。
このことを堅気の人間に話したら、みな「信じられない」という。
そりゃそうだろう、普通の新聞テレビで大きく取り上げられているわけではない。
印刷物が多いのも特徴だ、まずカタログは、毎回2000円、その厚さは
名古屋市の電話帳を越える。晴海時代はカタログを購入しなければ会場に入場
することはできなかった。そのころは1000円くらいでまだ持ち運びが効いたが、有明時代になると持ち運びすらままならないようになってしまった。
そのため現在はカタログを購入しなくても入場が可能になった。しかし、
私は現在でもカタログを購入する、なぜならカタログなしでは地図なしで
知らぬ土地を歩くのと同じだからだ。35万人も集まるところでいきあたりばったりは到底無茶な話。私もカタログを元に地図を引き、行動計画を策定する。
当日はその地図を持参する。これでないととても無理だ。
コスプレをする場合は、委員会に申し出て「チェンジ」という小冊子をもらう。
これにはいくつかの注意事項がかいてあるが、この小冊子がコスプレに必要な
更衣室への入場証になる。
前日の夜11時の名古屋駅は、カートを抱えた人たちでごった返していた。
コミケはウルトラクイズのような命がけの体力勝負の行事だった。
私だって、いつも生きて名古屋に帰れるとは思っていない。
けれど、東京は私の故郷。ふるさとに攻め込んで命を落とすことになろうとも
なんの惜しいことがあろう。むしろ故郷に意気揚々と凱旋するのは誇りに思う。
多摩川を越えたら町々が私にこう語りかけてくる。
「細川さん、お帰りなさい。お待ちしていました。」
私が知っている町はみな私がいつかは東京に帰ってくれるものと信じているのだ。
このようにいつかはコミケで命を落とすものが出てくるだろう。
私はコミケのための靖国神社を作り、コミケのために命をささげたものは
すべて永久にそこへ祭られることを進言する。
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