25.38度線の攻防

第25話

警視庁と神奈川県警はとにかく仲が悪い。

町田市の市章は鶴の形をイメージしたものだが、町田市の形が神奈川県に食い込む鶴の形をしていることに由来したものだ。

警視庁と神奈川県警の仲の悪さはそのまま両者の境界である町田市と相模原市にとばっちりとなってふってきた。これを誰言うとなく「38度線の攻防」と呼んだ。市民を守る警察官が仲たがいしているようでは市民はたちまち警察を信用できなくなるのは当たり前だ。市民の信託と信用があってはじめて警察による治安が成り立つ。

警察はあくまで民衆を守る民衆のための警察であるべきだ。そのために交番があるのだ。交番という制度は世界でも日本だけにしかない制度だ。そのすばらしさは日本の治安が先進国でもトップクラスだということで証明されている。だが、警察の相次ぐ汚職は才能ある者の警察官志望者を減らし、警察官の質の低下を招き、市民の信頼を失って現在の検挙率低下と治安の低下を招いた。

1981年、町田市の共産党幹部の自宅電話を神奈川県警の警察官が盗聴していた事件が発覚したが、これも町田市が東京都内で警視庁が告発していたから発覚したのだ。

やっかいなことに、町田市はそのほとんどの区域で神奈川県との境目を表示していない。小田急線から見える和光大学のキャンパスは、教室の中を県境が通っているくらいだ。学長室が町田側にあることから、和光大学の住所は町田市内となる。国土地理院発行の25000分の1地図の「原町田」は一枚で8市の区域を表示している。

それほど町田市の区域は入り組んだり飛び地があったりしているのだ。

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