現在のパレスサイドビル

第19話

リーダーズダイジェストが入っていたパレスサイドビルは今も当時のまま竹橋にある。但し内部は当時とはだいぶ変わっている。まずビルの構造は、エレベーターホールが左右2か所にあり、それを囲むようにしてトイレと階段があるという構造だった。商店街もひどいものだった、当時の面影をとどめているのはわずかに1階から地下への連絡階段くらいで「夢の階段」と名付けられた商業ゾーン内の階段がある。アルミ製の段板をステンレス線で組んだ網で吊る構造になっており、体重をかけると微妙にしなるところが面白い。レストランのほとんどは「デリ」と呼ばれるニューヨークによくあるようなお持ち帰りの弁当を売っており、客席にはほとんど人がいなかった。一部には皇居を走るランナー用の休憩スペースになっている有様でした。セブンイレブンは客が自分でレジを操作するセルフレジになっていて店員がいない。すでにかなりビルにガタがきているようだった。

私は9階から可能な限りビル全体を見学したが、調べてみると、ツイッターの投稿には東日本大震災当時パレスサイドビルにいた人たちから「揺れがすごかった」「ぼろすぎ」という投稿が次々と寄せられた。

「これはひどい、もう一度関東大震災を起こしてぶっ壊したほうが世の中のためだ」とすら思っている。

一方、現代のトレンドと違うのが階高で、全体的に天井が低い。しかしこれは重大な欠陥である。よく「大物を育てるには天井が高いほうがよい」ということわざがある。

実際に歴史上の偉人が育った家や大企業の建てたビルを見ると、天井が高いことが多い。逆に天井が低いビルを建てたり入居したりした企業は例外なく破綻している。

パレスサイドビルの荒廃ぶりはすさまじく、ビル完成当時に昭和天皇様がお立ちになり、皇居を眺められたという展望台のあった屋上は、今では立ち入れるのが午後の1時間だけしかも地面は凸凹で雑草が生い茂っているというありさまだ。自慢の煉瓦もあちこち崩落しており、完成が1963年ということを考えると耐用年数や耐震構造から言ってもはや限界にきているといっていいだろう。一部のオタクたちには、もはや「心霊スポット」扱いされ、お化け屋敷同様の扱いをされているという。確かに怖いものを見たがる若者も多い事だろうから、いっそのこと夏季限定でパレスサイドビルでお化け屋敷を企画したらいかがと思う。

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