お客様を紹介された時の話!
崔 梨遙(再)
1話完結:1100字
僕が30代後半の時の話。その時、僕はフリーの求人広告屋をやっていた。求人広告以外のことも、『採用』に関わることならやっていた。採用に関わりの無いことまでやっていた。
或る日、知人の三田社長という人から電話があった。
「崔君に紹介したい会社があるねん!」
三田社長は癖が強い。“どんな会社を紹介されるのだろう?”不安があった。だが、チャンスは大切にしなくてはならない。実際、知人から紹介されて上手くいったことも多い。僕は三田社長について行くことにした。
行ってみると、その会社の経営陣がいたが、よくわからない話題になった。超常現象について、“何か変わった経験が無いか?” など聞かれた。初対面でヘビーな話をしても仕方が無いので、コーヒーカップのスプーンがくるくる回った話など、軽めの不思議な体験を話したら盛り上がった。
次に、“UFOを見たことがあるか?”と聞かれた。“多分、見間違いだと思うけど見たことがある”と答えた。更に盛り上がった。
「オレンジ色の葉巻型の飛行物体が瞬間移動で三角形や四角形を描くように飛んでいました。でも、多分、ヘリコプターか何か? 僕の見間違いだと思います」
「いや、それはUFOですよ、宇宙人は見たことありますか?」
「幼い頃、小さくて頭と目が大きな宇宙人が部屋に入ってきました。その後で何をされたのかはわかりません。それからしばらくして、緑色の髪の美女軍団が入って来ましたけど、何をされたのかはわかりません、でも、多分、夢でしょう」
「いやいや、最初に来た宇宙人が崔さんに何かを埋め込んで、後から来た宇宙人がそれを取り出したんですよ」
僕はその時点で、“嘘だー!”と思った。そして、“僕は何のために連れて来られたのだろう?”と思った。
なかなか雑談が終わらないので、聞いてみた。
「それで、今日、私が呼ばれたのは何故でしょう?」
すると、“仮想通貨をつくるから出資しませんか? 一口140万円です”と言われた。
“えー!? 僕がお客さんなの? 僕のお客さんじゃないの?”
「求人とか採用のお話ではないんですか?」
「それは今のところ無いです」
「三田社長」
「何?」
「すみません、投資する気はありませんので、これで失礼します」
僕はさっさと立ち去った。
後日、三田社長から電話があった。
「崔君、この前の仮想通貨の会社だけど、結局、仮想通貨を作れなかったらしいよ」
「三田社長はどのくらいの金額を投資してたんですか?」
「俺? 俺は1円も投資してないよ、胡散臭かったもん」
「え! ほな、なんで僕を連れて行ったんですか?」
「崔君なら投資するかな? と思ったから」
おいおい、自分が投資していないビジネスに僕を巻きこむなよ! と言いたかった。言わなかったけれど。
お客様を紹介された時の話! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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