11.

可愛い。

そんな言葉が無意識に出てしまいそうになるぐらいだった。


「人の趣味にあれこれ言う権利は私にはありませんので、これ以上何も問いませんが、抱き枕のことについては伺ってもよろしいでしょうか」

「抱き枕⋯⋯? あ、はい、いいですが⋯⋯」

「色んな抱き枕を吟味なされていたようですが、何故ハニワに? 大河様とお揃いのようですが」


何を聞かれるのかと身構えていた姫宮が、「ああ、そのことですか」と肩を少し落とした。


「江藤さんが言うように色んな抱き枕を見たのですが、どれもしっくりとこなかったのです。私が何に対しても興味がないというのもあるのですが。⋯⋯けれども、あった方が気が紛れるのかなと思いまして」


ぽつりと呟いたことに、それはどういうことなのだろうと首を傾げた。

そのことについて追求してもいいのかと迷っていると、姫宮がこう続けた。


寝る時、大河が小口と一緒に寝ていることをふと思い出した時、羨ましいと思った。

本来であれば、小口の役目は自分であり、一緒に寝てあげるべきなのだ。

しかし、大河が懐いているのは小口で、一番安らぎたい時に自分なんかに添い寝でもされたら嫌だろう。

そう思うと、寂しさも募ってしまい、なんでもいいから温もりを求めて、抱き枕を代わりにしようと思い至ったようだ。


「そうして、最終的に取っていたのは大河が好きなハニワの抱き枕だったのです。⋯⋯あ、このことも言わないで欲しいのですが⋯⋯」

「言いはしませんが⋯⋯可愛いですね」

「そんな言葉を言うほどでは⋯⋯」

「そんなことはありませんよ。それに、私からすれば少し歳の離れた弟のように思えるのですから。可愛く思えるのです」

「⋯⋯私、一人っ子でしたので、江藤さんのようなちゃんと話を聞いてくれて、気にかける姉がいたら良かったなと思います」


眉を下げていた顔から一変、嬉しげに頬を染めて言った。

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