10.
「頼んだものがきましたから食べましょうか」
「はい。⋯⋯手を合わせて、いただきます」
「いただきます」
よく大河に言う食事の挨拶だ。ここまでもごく自然と言ってしまうんだなと本人に気づかれない程度に小さく笑い、頼んだものを口にした。
「えと⋯⋯江藤さんは最初からついてきたということですよね?」
食事を楽しんでいると、おもむろに口を開いた。
「はい、そうですよ」
「そうですよね。⋯⋯そうですよね⋯⋯。ということは、私が抱き枕買う前のお店に行った時もいた⋯⋯ということですか⋯⋯?」
「この際白状しますが、はい」
「⋯⋯! そ、それだけは誰にも言わないでください!」
普段控えな彼が発せられたとは思えない声を上げて、真っ赤な顔を見せる。
びっくりした。
数秒固まっていたが、周りの視線に気づき、ハッとした。
「ひとまず、落ち着きましょう」
この時、相手が慌てた態度でいると逆に冷静でいられる。
その言葉通りに落ち着き払った口調でいると、自身が声を上げて立ち上がっていることに気づいたようで、「⋯⋯はい、すみません⋯⋯」と小さくなりながら座った。
「私、そのようなことを言いませんよ。特に姫宮様のことが大好きな安野さんが知らない秘密を知ることができたのですから」
悪戯な笑みを見せる。
そうすると、安心したのかホッとしたような安堵の笑みを思わず漏らしていた。
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