6.

広いフロアの中、迷いに迷っていた姫宮が行き着いたのは寝具コーナーであった。


枕を手に取って弾力を確かめている様子の彼に、なるほどと納得した。


枕はさすがに使っている本人じゃないと分からない。

無理をしてでも買い物に来た理由が分かり、ことの成り行きを見ていた。


しばらく色んな枕を吟味していた姫宮だったが、どれもしっくりと来なかったらしく、落胆している様子だった。


その気持ちは分からなくもない。


江藤自身も色んな枕を確かめて、それとなくしっくりとくる枕を使っている。

本当にこだわる人であれば、オーダーメイドするほどらしい。

いい枕に出会えなかったら、それとなく言ってみて、そうさせてみようか。

誕生日プレゼントと称してあげるのもいいかもしれない。まずは、誕生日はいつなのかと聞いてみなくてはとあれこれ考えていると、周りを見渡していることに気づいた。


「⋯⋯他にも何か探しているのかしら」


ぼそりと呟いていると、姫宮は商品棚に沿うように歩いていき、そのまま裏の方へと行った。

追いかけなくてはと、やや急ぎ足でその裏側へと行った時、心臓が飛び出そうになった。

枕コーナーの裏は抱き枕コーナーだったらしく、それらをじっと見ていたのだ。

急ぎ足の勢いで行っていたら、気づかれていたところだった。

間一髪のところで棚の陰に隠れる。


姫宮は最初、ウサギを手に取ったかと思ったが、棚に戻し、次にチンアナゴを手に取り、じっと見ていたかと思うと、再び戻した。

枕の時のように何度も手に取っては戻しをくり返して、江藤の体感時間だとかなりの時間が経った頃。

決まったらしい姫宮がそれを持って、会計場所へと向かっていた。


姫宮が買おうとしている物、そうそれは、ハニワだった。


抱き枕らしく胴が異様に長く、抱きつきやすいよう細身となっているそれに見覚えがあった。

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