4.

携帯端末ごと傾けて見ていたりと、かなりの時間を要してようやく姫宮は歩き出した。

ところが、それでも目的地への道のりだと確信してないようで、その足取りはどこか臆していた。


大丈夫なのかしら。


亀のような速さで近すぎず、離れすぎずの距離間を保っていた江藤は心配でならなかった。


不意に立ち止まっては携帯端末を凝視していたり、分かれている道の前で左右を見回していたり、行ったかと思えば来た道に戻ったりと忙しなかった。


ちょっとでもタイミングを逃してしまえば気づかれてしまうようなギリギリのラインで、そうしているうちに姫宮の目的地に着く前に疲れを覚えていた。


「⋯⋯さすがに早く行って⋯⋯」


そんな言葉が漏れた、そんな時。

ある店の前で立ち止まった。

ようやく目的の場所に来れたのかとその店を見やった時、え、という声が漏れた。


女性物の、しかも露出度の高い下着屋だった。


ショーウィンドウに飾られているベビードールが照明に照らされて、生地の薄さを露出していた。

ブラ類なんて、着けるというより、先を隠すぐらいの布面積で、必要性があるのかと心の中で突っ込むほどだ。


自分なんて、通販にある一枚何百円のを六枚組のを買っている。

一度、興味本位でそのような下着を検索したことがあるが、ショーウィンドウで飾られているような布が少ない物でも数万する物もあり、どの辺りにそのぐらいの価値があるのかと驚愕したのを覚えている。


そこで江藤はあることを思い出した。


前に安野らと交えて、ちょっとした他愛のない話をした時のことだ。

特に安野が姫宮のことを「可愛い可愛い」と連呼するものだから、つられてというのもあり、そう言ったことがあった。

実際に華奢で、かつ、中性的な顔立ちをしていて、自分よりも可愛く見えるのだ。

その遺伝が大河にも現れているのだろう、彼もまた可愛らしい顔立ちをしている。

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