第25話 二人の言い分


「許さない、許さないぞっ、ティト! なんで俺が駄目で、フォンターナならいいんだっ!

あのおっさんが俺たちに勝っているところなんて、歳がちょっと上だというだけだろうがっ!

剣の腕だってからきしだ! 顏だって、スタイルだって、性格だって、俺の方がよっぽどいいのにっ!」



「ティト、君は惑わされているだけだ! フォンターナなど、強化魔法がちょっとばかり得意なだけのただのすかした男じゃないかっ!

たしかに小銭は持っているかもしれないが、我がグリマルディ家の方が財力は上だっ!!

それに私だって、補助魔法は使えるぞ、ティト! 考え直すんだ!」



「え、いや、あの、その……」


 ソファに座る俺の膝に、そのまま乗り上げそうな勢いのファビオとオルランド。


 二人の美形に追い込まれ、俺はたじろいだ。



 ――で、何の話なんだっけ?



「あの、とにかくっ、そういうわけなんでっ、俺のことにはどうぞお構いなくっ!」


「「嫌だっ!!」」


 ファビオが俺の右肩を、オルランドが俺の左肩を掴むと、そのままソファの背もたれにぐっと押さえつけてきた。



「ティト、俺が贈った詩を、いつも素晴らしく感動的だって、褒めていてくれていたじゃないか?

あれはもちろん君への愛の詩だ! 俺は、長い間ずっと、君を狂おしく想ってきた!

――それなのに、ティト、君は俺の気持ちを無下にしようというのかっ!?」


 ファビオの青すぎる瞳に、俺は思わず吸い込まれそうな感覚になる。



 ――え??



「ティト、君へ贈った魔道具を、君はいつも毎朝、毎晩、大切に使ってくれていると私に教えてくれたじゃないか。

私はあのオルゴールと目覚まし、その他もろもろを、君への愛を込めて作ったつもりだ。だからつまりは……、君は私の気持ちに応えてくれるのだと思っていたんだ!

……それは私の勘違いだったというのか?

私の心をこれほど弄んでおいて、君はフォンターナのもとへ行こうというのか?

……君はひどく残酷なひとだ!」


 オルランドの漆黒の瞳には、深い悲しみの色が宿っている。



 ――は??




「ティト、君じゃなきゃだめなんだ!」


 ファビオが俺の右手の甲に恭しく口づけた。


 

「ティト、どうか私の愛に応えて……」


 そして同じように、オルランドも俺の左手の甲に……。




 そして俺は……、


 激しく混乱していた!!


 愛!?

 俺への愛の詩!?

 愛を込めて作った魔道具!?



 ――ナニソレ!!??




「ちょ、ちょっとまってください!

ファビオ様、詩ってなんですか? 俺そんなの、見たことも読んだこともありません!

それに、オルランド様にオルゴールと目覚ましをもらった覚えもありません!


――もしかして、人違いじゃ……」




「「ないっ!!」」



 また二人の声が揃った。



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