第6話 役立たず
――もう、第4層、なのか……。
フカフカの温かいベッドに潜り込み、シーツを首元まで被った俺は大きなため息をついた。
ちなみにベッドの真ん中は『イラーリア』の定位置なので、いつも俺はベッドの端で、横向きで小さくなって眠っている。
ファビオとオルランドとダンジョン攻略の旅に出てから、もう少しで20日が経つ。
はじめから俺たちはダンジョンに向かったわけではない。というのも、ダンジョンに入るためには最低でもAランク以上のレベルと経験値が必要で、すでに推定値SSSクラスという見たことも聞いたこともないステータスを保持するファビオとオルランドはともかく、この俺のレベルが全く足りなかったからだ。
しかしなぜ、ファビオはこんな足手まといにしかならない俺をメンバーとして選んだのだろう? 学園には二人には及ばないものの、剣術の得意なものも、魔法のレベルが高いものも、たくさんいたはずなのに……。
だが、そんな疑問をよそに、ファビオとオルランドは、レベルの足りない俺のために、嬉々としてまずは『嘆きの森』へとフィールドを移した。
そこは、中級レベルの冒険者のレベル上げにうってこいの場所で、俺は二人の後ろにくっついて歩くだけで面白いようにレベルが上っていった。
もちろん『嘆きの森』でのモンスターはファビオとオルランドにとって、「敵」とも認定されないような弱さだったはずだったのだが、貴族のお坊ちゃまの二人にとって冒険とモンスター狩りの旅は思った以上に楽しかったらしく、二人は終始笑顔だった。
俺は、なにか自分にもできることはないかと、ない頭で必死に考え、二人の役に立とうと頑張ったのだが……。
腕力には自身のある俺。張り切って荷物運びを買って出ようとしたら、オルランドの「アイテムボックス(※超大容量)」の魔法で、荷物はすべて収納済み。「ティトは手ぶらでいいんだよ」と言われてしまった。
『嘆きの森』での野営では、せっかく料理を任せられたというのに、生活魔法が下手くそすぎて、肉を全部焦がしてしまう始末……。二人は「これはこれで美味しいよ」と笑いながら食べてくれたが、心のなかでは相当呆れていたに違いない……。口の周りは炭だらけだったし……。
極めつけは、モンスター狩りで疲れた二人を少しでも癒そうと、夜のテントで肩と背中と腰のマッサージを申し出たところ、二人は突然取っ組み合いの喧嘩をはじめてしまい「もういいから、ティトは変なこと言い出さないで!」と、怒られてしまった……。
結局なんの役にも立っていない俺。
しょげる俺を見かねてか、ファビオは俺に「剣を握って荒れた手指にクリームを塗り込むこと」、オルランドは「自分の長い髪を梳かして、結い上げること」を毎日の仕事として課してくれた。だが、こんなこと、はっきり言って俺じゃなくてもできることだし、仕事というにはあまりにも簡単すぎる!!
俺がこの史上最強のパーティにおよそふさわしくない存在である、ということは誰の目から見ても明らかだった。
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