灰色のマグノリア

主道 学

第1話 000

 ローマ・アッピア街道


 紀元前312年頃に監察官アッピウス・クラウディスが建設した。このアッピア街道は、道路の女王とも呼ばれているローマ最古の軍用路だ。その道路を今では、一台の軽自動車が通っている。


 軽やかな緑色のその軽自動車には、男二人の旅人が乗っていた。なんでも、ワインの旅と称して、遥々イギリスから来たのだそうだ。二人はカプアに向かう途中だった。だが、一旦停車して一人が降りだした。どうやら、昼間からワインを飲んでいるため。飲み過ぎで催したようだ。


 それから、催した方の男が木陰で用を足している間に、野生のカラスが大量に男の周りに集まってきた。


 見たこともない灰色の野鳥も集まり。


 不気味な鳴き声をする野犬も集まってきた。


 不可思議なことが続き、男は用を足すどころではなくなったようで、慌てて車に戻って来ると、不思議な事に、一冊の本を手に持っていた。


 その本は、後にカタコンペの聖女と呼ばれた女性が書いた古い日記だった。 

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