第14話 スライム執事
「コルベメネス様の詮索はそれぐらにして下さいですわ」
ララザニアさん言葉使いがおかしくなってないか?
「ふむ、女神像の覚醒と我が皇帝像様の覚醒は、同時進行しているようじゃのう」
いきなり後から声が聞こえた。この声には聞き覚えがある。皇帝像の執事を名乗るベルドボルグだ。
「あんたまで出てきたのか?」
振り返ると、黒いタキシードに身を包んだ初老の男が立っていた。こちらもララザニアと同じように半透明だ。
「コルベメネスさま、お初にお目にかかります。ベルドボルグでございます」
「おぅ、あんたか。確かにあんたとも会うのは初めてだな。あんたもこれからは姿を現すのか?」
「はい、不本意ながら、あちらの侍女と力を合わせます」
「幽霊がもう一人・・・」リーザはそう呟いて気を失った。
それを見たララザニアは、
「これはちょうどよい機会ですわ。この方の体をお借りしますわ」と言うと、光の粒子に変わってリーザの中に吸い込まれていった。
「おい、何をした?」と、俺が慌てると、
リーザは起き上がって、ララザニアの口調で話はじめた。
「宣戦布告された以上、戦いは始まったも同然ですわ。しかしながら、コルベメネス様が連れているこの女性は明らかに戦力不足。この戦いに巻き込まれたら、すぐに命を落としますわ。ですから私がこの体に入ることで彼女の命を守りながら、我が主様のお側にお仕えすることも出来る。まさに一石二鳥でございますわ」
ララザニアさん。言葉がさらに変になってるんですけど。
「ちょっと待て、俺とリーザは新婚のようなものなんだぞ」
「あら、夜の生活は私のことは気にせずに」
「そのときはリーザから出ていくんだな」
「いいえ、私も一緒に楽しませて頂きますわ」
「おい、それはプライバシーの侵害だ。それにリーザの意思はどうなる?」
「何を今さら。私はあなたの左腕の付属品です。つまり、私は貴方の一部でもあるのですわ」
もう、訳分かんないんだけど〜、ララザニアさんの言うこと。
「おい、お主たち儂を置いていくな」
ここでベルドボルグが、無理やり話に割り込んできた。
「ララザニアよ、お主だけ勝手に肉体を持ちおって。抜け駆けは許さん。それなら儂も肉体を得てくるから待っておれ」
そう言うなりベルドボルグは姿を消した。
「おい、ベルドボルグ。執事さ~ん。何処へ行ったんだ〜」
俺の呼びかけは迷路の中で虚しく木霊した。
「アイツ、何処へ行ったんだ?」
と、リーザに憑依したララザニアに聞く。
「存じませんわ。あんな偏屈爺のことは気になさらずに、私たちは先に進みましょう」
「ちょっと待て、このまま進む気か?リーザはどうなってる?」
「私が起きている間は眠っておられますわ」
「いったんリーザを出してくれ」
「リーザ様とは夜にお会い下さい。昼間はこの体は私が使います」
「おい、何を勝手に決めてんだ?頭くるなぁ〜」
「私をこの方の体から追い出したいならもっと女神像様の左腕のレベルを上げてください。そうすれば、私も密度が高まり、このように、人の体に潜めなくなります」
「どれくらいレベルを上げればいいんだ?」
「このダンジョンを攻略できたら、ぐらいでしょうかね?」
「本当だな。嘘だったら承知しないぞ」
「誓って本当ですとも」
「よし、それならダンジョンを速攻で攻略してやる」
「待て待て、ダンジョンの攻略に、儂を置いていってはいかん」
「うん?この声は?」
「吾輩である」
声はしているが姿が見えない。
「おいどこにいる?姿を現せ」
「目の前におるではないか」
声が下から聞こえるので下を見ると20センチほどの上半身だけのベルドボルグがいた。
「お前、いったい?」
「下半身は何ですの?スライム?」
「ご名答」
「どういうことですか?」とララザニア。
「ふむ、よくぞ聞いてくれた。100階層で超希少種であるアサシンスライムを見つけたのでな、その体を乗っ取った」
「アサシンスライム?」
「知らぬか?コルベメネス殿は知らなくて当たり前じゃな。アサシンスライムは、一見普通のスライムのごとく小さくひ弱な見かけをしておるが、その実はSクラス上位の魔物じゃ」
「それで下半身がスライムなわけか」
「しかし、その大きさと姿では不便じゃないのか?」
「心配は御無用。スライムはどんな形にもなれますのでな。全身人の姿になるのは造作もござらん」
「では、大きさは?」とこれはララザニア。
「これからスライムを吸収して大きくなるつもりじゃ。それよりコルベメネス殿」
「なんだ、あらたまって」
「このような浅い階層で弱い魔物を倒してもたいした経験値になりませんぞ。せめて150階層まで行ってそこからダンジョン攻略を始めるべきかと」
「おい待て待て、お前だって100階層なんだろう、なんで俺が150階層何だ。そんなところへ行けば瞬殺されてしまうじゃないか」
「何を仰る?例え片腕だけとはいえ皇帝像様の腕が、魔物ごときに遅れを取るわけは御座いません」
「そ、そんなに強力なのか皇帝の右腕って」
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