第4話 フォーメーション

 金川がギルドに加入してから4日後。

 俺たちは今、ダンジョン一階層に2人で潜っている。


なぜ2人でダンジョンに潜っているのか?

 それは斗真の「2人で潜った方が効率がいいぞ」という発言が始まりだった。

金が欲しい金川に経験値が欲しい俺。

確かに斗真の言う通り、ペアでダンジョンに潜れば1人でやるより強いモンスターともやれるし、数も多く倒せる。

強いモンスターと戦えば倒した時の経験値は多く、数を倒せばそれだけ素材が手に入り金になる。

斗真の提案は俺たちにとって利点しかなかったのだ。


最初に共闘する前、俺たちの間にこんな会話があった。


「金川はどんなスキルを持ってるんだ?」


 2人以上でダンジョンに潜る時はお互いの戦い方をある程度知っておいた方がいい。

 何も知らない奴同士が手を組んでも邪魔になって同士討ちになる可能性があるからだ。


 ぱっと見、金川は武器を持っていない。

 ずっと持ってるバッグが少し怪しいがあの中に入る武器といえば短剣くらいだ。

 俺も剣を使うし、お互いに近距離だと少しやりづらい。


「私の固有スキルは『四面楚歌』。歌とか音で相手を幻覚に嵌めるスキルよ。まあ色々使い勝手は悪いんだけどね。」


そこから金川は四面楚歌の能力について詳しく教えてくれた。


 四面楚歌とは幻覚系のスキルで歌や音によって敵を幻覚に嵌める能力。

 四方八方から攻撃される幻覚を見せて敵を同士討ちさせるのが主な使い方らしく、このやり方で倒せなかった敵はいないそうだ。

 ただしスキル発動に成功すればの話。


このスキルにはデメリットもあって、それは幻覚にかけるまで歌ったり、楽器系なら音を奏で続ける必要がある事だ。

 敵の強さによって幻覚をかけるまでの時間は伸びたりして、その間は無防備の為、1人では使い勝手が悪いことこの上ないらしい。

 無差別攻撃ではないので仲間に幻覚がかかる心配はないらしいが直接倒した方が早く、金川を護り続ける事に嫌気がさした仲間たちと口論になり、金川は前のギルドを抜けたそうだ。


 確かに雑魚相手なら必要ないかもしれないが。強敵相手に使う一発逆転の手段としては非常に優秀だ。

 このスキルは下層ほど力を発揮する。

 そんな気がする。


「一応、軽い音でも一瞬なら幻覚を見せる事が出来るわ。まあ鼻が効くモンスターには意味はないけど、人間相手の視線誘導くらいには使えるかもね。」


こんな風に、と言いながら金川が指を鳴らすと、本の一瞬だが金川が6人に見えた。

だが、それは本当に一瞬の出来事で確かにモンスター相手には通用しないと思う。


「ソロだと短剣がメインになって来るわね。ていうか他の武器使った事ないし。」


 そう言いながらバッグから金川は短剣を取り出した。


 短剣か…さっきのスキルを聞いた後だと、この武器は合ってない気がする。

 固有スキル的にも金川は遠距離から攻撃する手段を持った方がいい。

 弓か銃…その辺りの武器が妥当だと思うがどう説明したものか…


 俺の方がレベルは下だし、そんな奴が口出しするのもなんか違う気がする。

 ここは俺が金川に合わせた方が無難だ。


「じゃあ俺が後衛に回るスタイルで行こう。それでいいか?」


「まあ、それが妥当でしょうね。私の方がランク上なんだし。」


 余計な一言に苛立つ気持ちを抑え込み、俺は遠距離用の弓矢を構えた。


 長年冒険者をやってるお陰か、俺は様々な武器を一通り使いこなせる。

 その上で剣を使っていたのはコスパがいいから。

 弓や銃は金がかかる。

 いちいち矢や弾を補充するのは金がかかる。


(あ、だから短剣使ってるのか。)


こうして俺たちペアは前衛の金川、後衛の俺といったフォーメーションでダンジョンを探索する事となった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


金川美玖 

年齢 19歳

ランク 2

レベル 11

所属ギルド 【銀狼の牙】

固有スキル 『四面楚歌』『???』

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