かなたにまごう

丸岡0時

旅立ち 第一幕 ヒトリニギヤカ

第1話 出落

 肉体から、魂が抜け落ちるような衝撃だった。


 おだやかな初夏の日差しが注がれる、あばら家。

 俺の対面には、風変わりな和服を来た少女が座る。

 

「つまりは」

 

 神様を名乗るその少女は、正座のまま、深々とその頭を垂れていた。

 

「俺は君に殺されたのか」

「まことに申し訳ないのじゃ……」


 その頭には目を引く小さな角と、丸みを帯びた三角の獣の耳がついていた。


 ぼんやりとした頭のまま対面に座る俺の視界に、ぼんやりと透き通った自らの身体が映り込む。

 あぁ、頭も体も無くなったんだっけ。はは。

 

 ほーほほけきょ。

 春を告げる鳥のまだ不器用な歌声が聞こえ、俺もそぞろに鳴きたくなる。


 目に鮮やかな新緑の季節も徐々に落ち着き、草木や虫達もこれからが花盛りの頃。

 【浜梨 奏向はまなし かなた】アラサーは、人生の夏を迎えるその前に、見事に花を散らせていた。


 うん。どうして、こうなったかな。

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