角くんはボドゲも恋も育みたい(アドベントカレンダー2024)

くれは

1 初めての

 受験中にボドゲ棚を覆っていた大きな布は、受験が終わって大学生になった今も、ボドゲ棚を覆い続けている。

 その理由を俺は瑠々るるちゃんに対して「埃がたまらなくて便利だなって気づいて、それでなんとなくそのままにしてて」と言い訳しているのだけれど、実際はもうちょっと複雑──いや、複雑ではない、単純な下心だ。

 瑠々ちゃんが部屋に時々遊びにくるようになって、例えば、その、良い雰囲気になったりした時に、うっかり瑠々ちゃんの体質──ボドゲの中に入り込んでしまうというそれが出てしまったら、という想像をしたりする、その結果だ。

 実際のところ、棚に並んでいるボドゲに入り込む可能性は少ないと考えている。ただ、それも経験からくる仮説でしかない。そんな油断からそんなタイミングで万が一が起こったりしたら、きっと俺はボドゲを遊ぶどころじゃなくなってしまう。平常心を保っていられる自信もない。

 だから、ボドゲ棚を隠す布は今もかかったままになっている。

 そんな俺の下心をどのくらい知っているのか、多少は仲が進んだ今になってもまだまだ恥ずかしさと照れが伺える瑠々ちゃんは、それでも今日も俺の部屋にやってくる。

 今日の目的はそんな下心だけではない。いやまあ、全然ないとは言わないけれど、それだけではないし、それがメインでもない。

 今日は、俺が作ったボドゲを瑠々ちゃんに遊んでもらうのだ。

 そう、俺は初めてオリジナルのボドゲのルールを考えた。オリジナルとは言っても、参考にしたゲームはもちろんある。

 そもそもボドゲというのは、様々な仕組みメカニクスの組み合わせでできている。その構造を細かく分解してゆけば、基本的には単純な仕組みになるのだ。その仕組みをどのようなバランスで組み合わせるのか、どのようにプレイ感を調整するのか、にオリジナリティが出るものだと考えている。

 だからつまり何が言いたいのかと言えば、既存のゲームの何かには似てしまっているかもしれないけれど、これは俺が初めて考えた俺オリジナルのボドゲだということだ。

 もちろん、店で売っているように印刷したカードやオリジナルのトークンや駒を用意できるわけじゃない。だから俺が用意したものは、百均で買ったトランプのカードや、ビーズ、おはじきだったりするのだけれど。

 それでも実際に遊ぶことはできる。


(うん、大丈夫)


 準備は万端。ひとり頷いて、俺は瑠々ちゃんがやってくるのを待っていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月2日 07:07
2024年12月3日 07:07
2024年12月4日 07:07

角くんはボドゲも恋も育みたい(アドベントカレンダー2024) くれは @kurehaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画