14.

捲し立てた上に、「きちんと」を強調して言った安野は印鑑と茶封筒ごと持ち去っていった。


「······はぁー······これだから更年期は嫌だなー······」


聞こえるか聞こえないかの声量でため息を吐いた小口は、残りの物も出していった。

あとは玩具類だと思われるが、指人形、フィギュア、食玩······どれもこれもあのアニメグッズらしいハニワがわんさか出てきた。


「え、やば。あのアニメ、こんなにもグッズ展開されてるわけ······?」


人でいうところの足部分にタイヤが付いたハニワを転がしてみると、目を光らせていた。


謎。すごく謎。


まだ一回しか観てないが、何回か観ていくうちにこんなに集めるほど夢中になれる良さが分かるようになるだろうか。

全て出してみたものの、それを置く棚がなかった。

あとで買うように言っておくかと思いつつ、さっき観たハニワを描いている大河の周りに暇潰しにと置いていった。

置いていく最中、集中して描いていた様子の大河がふと顔を上げ、次に自身の周りを見て驚いているような顔をした。


「あ、やっと気づきました?」


小口なりの茶目っ気で言ってみるが、大河は呆然した様子で固まっていた。

どうしたものか。そんなにも驚くようなことだっただろうか。

首を傾げ、様子を伺っていた時、急にハッとした大河は描いていた絵を見せてきた。

そこに描かれていたのは先ほど観たハニワの絵だった。


「すぐに描きたいほどハニワが好きなんですねぇ。よく描けてますよ」


ありきたりな感想を述べた。ただそう言っただけなのに、まん丸な目を開かせていた。

その目が光っているようにも。


「え、どうし──······」


小口の言葉を遮るように、そのおえかき帳を置いた大河は、ダンボールから出したおえかき帳の一冊を今度は小口に押し付けてきた。

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