9.

部屋の隅で膝を抱えてじっとしている男の子の傍ら、ゴロゴロしながら考えていた。


その姿を見て安野がすかさず、「小口、なんて格好しているの! ちゃんと姫宮様のお子さんのお世話をしてなさい!」と怒られたが、小口の耳には一切入ってこなかった。


何気なくゴロンとうつ伏せになった時、ふとテレビが目に映ったことで、暇潰しに付けてみようかと思い、その横に置かれていたリモコンで付けた。

6チャンネル辺りだろうか、バラエティ番組が映し出されていたが、わざわざ1チャンネルから付けてみる。

2チャンネルを付けた時、やたら大きいハニワの大群がどこかの国の街並みを避けることなく、その硬い身体で無遠慮に壊していく場面が映し出されていた。


昔からアニメを観るのが好きで、いわゆる教育番組でやっているものも例に漏れず観ていたが、自身が小さい頃にやっていなかったしっちゃかめっちゃかなアニメに、今はこの時間帯にこんなアニメをやっているのかと何となく観ていた。


上下にと体ごと激しく動き、それがハニワ達の歩行であるらしいが、人間達にとっては立っていられない程の強い揺れであり、自分達の街を壊されたのもあり、怒りに震える人間達は迫りくるハニワ達に立ち向かおうとしていた。


「⋯⋯いや、どう見ても無理でしょ」


そんな言葉が思わず溢れる。

着々と近づいていくハニワ達とその揺れに耐えきれず、四つん這いになりながらも歯を食いしばって睨む人間達のせめぎ合いに、どうなるんだと観ていた時、不意に隣から気配を感じた。

誰なのかと振り向くと、ついさっきまで端にいた男の子が、いつの間にかやってきては一緒に観ていたのだ。


「このアニメ、好きなんですか」


あの親にしてこの子どもだ。何に対しても興味なさげであったが、このアニメに対しては興味がありそうだった。

そう思い訊いてみると、やや間の後、ためらいがちに頷いた。


やっぱり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る