アシューリスと死霊術師

  エスト王の国の西の地を領地に持つアダイト大公は玉座に座り一人の男の話を聞いていた。アルバ侯爵とサヴィーニ伯爵と手を結び三つの勢力の中でアダイト大公の勢力は最も大きいものになっていた。アダイト大公は自身の勢力下にある諸侯達を集めてラファールの陣営かマラガン公の陣営かのどちらにいつ宣戦布告するかを考えてていた。

 中立の貴族達の大半が王子シンビスが正式な世継ぎであること、ラファールの軍が一番兵力が少ない事を考えアダイト大公は男の助言通りまず王子であるシンビスをラファールから解放するという大義名分を掲げて王都の攻略をすることを考えていた。


 「それならばマラガン公と中立の貴族達は黙るかも知れぬな。暫くの間シンビスは生かしておきそのうちメリオスとマラガン公と共に消えて貰う。それより必ず勝てるのであろうな?アシューリスよ。」


 「はい、大公殿下。ラファール宰相の元には我が同志がスパイとして潜入しておりますゆえその動きは把握しております。アルバ侯爵とサヴィーニ伯爵を味方につけた功績としてお約束どおり港街から船を出して頂きますようお願い申し上げます。」


 「何の目的かは知らぬがいいだろう。加えてラファールの軍を打ち破れば更なる報酬を出そう。」


 「船さえ出してもらえれば他には何もいりません。大公殿下の元には我が同志数名を残しますゆえ。私は船へと急ぎます。」

 

 「分かった、しかし裏切らぬように船と貴公の同志には我が兵士を同行させてもらうぞ?」


 「それは構いません。それでは大公殿下。」


 「分かった下がるがいい。」


 アシューリスが去るとアダイト大公は側近を呼び男の同志を連れて来るように言った。暫くすると長髪の男が呼ばれて顔を出す。


 「貴公か、アシューリスの同志とやらは」


 「はい、大公殿下。」


 「それでラファールの動きは?」


 「兵力の差からこちらから攻め込めば城で防戦をするでしょう、そしてアルバ侯爵軍とサヴィーニ伯爵軍を警戒しシンビス殿下を救い出すという名目の元なら中立の貴族とマラガン公は手を出してこないでしょう。そうなれば数で圧倒的に勝る大公殿下の軍で容易に打ち破れましょう。」


 「ふむ、分かった。下がるがいい必要な時はまた呼び出す。諸侯達を集めよ!軍議を開く」


 長髪の男は自室に戻るとラファールの傍に控える同志にアダイト大公の軍が動くことを思念で送った。アダイト大公が自身の勝利を思う中長髪の男はアシューリスと自身達の目的が果たせる事を思い笑った。


 (グムハザ神よ!シェイダルの守護する民達を貴方の元に捧げましょう!)

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