第1話 日常。そして、変化。
「――じゃあ、次はどこ行く?俺個人としては大型クライミング体験に行きてぇや」
「僕はひとまずデザートを食べられたらいいかなぁ」
「ちょっ、相変わらずだな。ま、確かにそれもいいかもな。それじゃここ出たらフードコートの方行ってクレープでも食べに行くか。お前はどこ行きたい?」
「俺は…そうだな」
と言って、俺、
今日は日曜日。俺達は一昨日学校で約束したように大型ショッピングセンターに来ていた。
誘ってきたのは小学生の頃からの悪友、
そして、もう一人のおっとりしているのが
そうだなぁ、やっぱりゲーセンだな。
「よし、決めた。ゲーセン行こうぜ」
「げ、またかよ。そりゃ楽しいけどさぁ、さすがに俺はもう飽きたぜ」
「まぁいいんじゃない?ひとまずクレープ食べて、そこからクライミング行って、ゲームセンターに行ってから帰りにアイスクレーム食べに行こうよ〜」
「まあクライミング先行くならいいか…ってちょっと待てよ!なにアイスクリームまで追加で行くことなってんだ!」
「俺はゲーセン行くのならそれでいいや」
「あっ、もちろんみんなで食べれるようにビックパックだよ」
「悪いやっぱり俺はいらないわ」
「いや俺もいらないからね?」
と、そんな会話をしつつお会計をして店を出て、フードコートの方に向かう。ここは一階の端の方だったはずだから、3階のフードコートに向かうためにはエレベーターに乗らないとな。
と思ってると、いきなり咲人が声を出す。
「そういえば言い忘れてた。最近体重少し増えてきたから少しでも運動するために階段で上っていってもいいか?」
「おいおい、階段はもう通り過ぎたぞ?というかそれならクレープ食うなよ」
「それとこれとは別なのだ」
「はぁ、まあいいけどさ」
ということで階段の方まで戻りながら更に話しかける。
「ところでお前らはクレープ何食べるつもりなんだ?」
「…」
「お前ら? どうした?」
別に変なことを言ったわけでもないのに返事が返ってこないことを不審に思って横を見る。そして、異変に気がついた。
ショッピングセンターの中にいるにも関わらず濃霧が漂っていた。それについさっきまですぐ隣に居たはずの二人の姿も見えない。
「くそっ、何なんだよ」
思わず悪態をつく。いくら咲人がおちゃらけているといっても、こんなドッキリをするような奴じゃない。ましてや、ショッピングモール内でこれほどの霧だなんてどう考えても変だ。
(そうだ、携帯なら着信音で位置がわかるかも)
そう思い、電話をかけようと携帯電話を取り出し電話をかけようとするが、圏外になっていてままならない。LINEを使おうにもWi-Fiにも繋がらない。
(連絡もできないか… とにかく、焦っちゃだめだな。 こういうときこそ落ち着かなければ)
急に置かれたこの状況をなんとか飲み込もうと深呼吸する。少し考えもまとまってきた。
(ひとまずこの霧から抜け出そう。 壁沿いに歩いていけば方向を失わずに歩いていけるはずだ)
そう思い、左を向いて、壁に向かって歩き始める。しかし、しばらく歩いても壁にたどり着かない。
(もうぶつかってもいいころなのに… 方向を間違えたか?)
なら、と思い向きを90度変えて再び歩き出すも、やはり壁にたどり着かない。
(どういうことだ…! どう考えてもおかしい。
現実的に考えてありえないけど、もはやショッピングモールとは別のところに飛んでしまったとしか)
脳のキャパシティを超えてしまい、狼狽する。しかし、留まっていてはだめだと思い、とにかく闇雲に歩き始める。
だが、やはり霧から抜け出せない。それでもと思い数分歩き続きたが、まるで霧でできた牢獄に囚われてしまったかのごとく霧は俺のことを離さない。
もはや、これまでかと思った。もしかしたら、俺は死ぬまでここから出られないのかもしれない。そう、諦めの心が根差し始めたとき、ふと地面に何か落ちているのを見つけた。
変化の無かった空間でようやく起こった些細な変化。俺がそれに飛びつかないはずがなかった。
あれは何だという疑問と一縷の希望をかけて、落ちているものを拾い上げた。それは、
(…本?)
一冊の、古びた本だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます