第12話 戦禍

 昨日までの平和が一変して、この国は戦争を始めた。かつてこの国は戦争により大きな傷を負ったというのに、約100年の平和を経て、いよいよ時代は逆行していく。 

 

 またあの時代に戻るのだ。前の戦争を知っている人はもう、誰もいない。誰も本当の戦争を知らないこの国で、戦禍は誰一人として無傷を赦さない。

 

 空襲が始まった。ドローンによる無差別攻撃も始まった。誰もこの戦争を止めることは出来ない。ならばせめて、最期の言葉を遺そう――。

 

 戦勝国の兵隊が焼け野原を歩く。そこに残っていたものは、今はもう灯ることのない、割れたスマートフォンだけだった。

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