記録 祠が破壊された村
Remi
記憶 ■■■■年■月■■日
見える景色はとある田舎の山奥。
右側が崖の獣道を私の身体は進んでいく。
前を歩く2人の少年の背中を追って。
しばらく歩くと獣道の真ん中に大人程の大きさの岩が見えてきた。
「そう!この岩!どこから転がってきたのかなぁ」
そう言ったのは私の口。
発されるのは小さな女の子の声。
「なぁ兄ちゃんこれどうにかできる?」
それに続いて私の前の少年がそう言った。
「できるって!兄ちゃんに任せろ!」
1番前を歩く少年がそう言った。
その少年はその岩の左側に移動した。
その岩を力いっぱい押す。
あの少年は10代半ばぐらいだろう。
年齢にしては体つきはいい。
しかし、あの大きな岩を動かせるとは思えない。
だが、その岩は少しずつ動き出した。
少年はそのまま、およそ1分ほど岩を押し続けた。
そしてついに、大きな岩は崖の下に転がっていった。
「凄いこう兄ちゃん!!」
「流石こう兄ちゃん!」
私の口と前の少年からそんな称賛の声が飛ぶ。
「まぁな!」
1番大きな少年が得意げにそう言った。
「じゃあ行こ!さちたちの秘密基地!」
私の口から出た言葉を合図に、3人の子供たちは再び獣道を歩き出す。
その数十秒後、山の中に轟音が響いた。
何の音かわからない子供達は辺りを見回す。
「あ!あれ!」と真ん中の少年が叫んだ。
私の視界もその方向を捉える。
その方向は崖の下。
崖の下から大きな鳥が現れ、空を舞った。
その鳥は私達が来た方向へ飛んでいく。
「おうちの方へ行った!」
「戻るぞ!」
私の言葉に1番大きな少年がそう答えた。
子供達は来た道を走って戻る。
だんだんと景色が開けてきた。
村が燃えているのが見える。
私の小さな体は泣き出していた。
しかし、その足を止めない。
小さな手足を必死に動かして走り続ける。
山道をもうすぐ抜ける、というところで前から男がやってきた。
「お前達!無事か!」
その男の姿を見た子供達は口々に「お父さん!」と叫ぶ。
「さちたちのおうちが!!」
私の小さな口はお父さんと呼ばれた男性に問う。
「大鳥様の怒りだ。誰かが祠を壊したんだ」
その言葉に2人の少年は「あ」と声を上げる。
「まさか…お前達が壊したのか!?」
「さっき…崖から道を塞いでた岩を崖下に落としたけど…」
男の問いかけに1番大きな少年がそう答える。
それを聞いた男はため息をつく。
「だから崖下に物を落とすな。山に入る時は気を付けろと言ったんだ!」
父親の説教に3人の子供は口々に「ごめんなさい」と言う。
そのとき「いつまで いつまで」と言う声が聞こえた。
「マズい。大鳥様がこっちに来る。お前達は行きなさい。遠くへ!」
「お父さんと一緒じゃなきゃやだ!」
「わがままを言うな。こうた、ふくなり。さちを頼むぞ」
「でもお父さん!」
「行きなさい!」
男の口からその言葉が飛び出すと同時に1番大きな少年が私の手を掴んだ。
そして、手を引かれて真ん中の少年と私の身体は走り出す。
その後すぐに、男の悲鳴が響いた。
それでも、3人の子供達は走る。
息を切らして、ふらふらになりながらも。
しかし、現実は無情だった。
突如、目の前にあの大きな鳥が降り立った。
子供達は立ち止まり、後ずさる。
「いつまで いつまで」という声と共に大きな鳥が迫ってくる。
子供達は恐怖からか腰を抜かす。
そして泣きながら、お互いの名前を呼んで抱き合う。
大鳥の嘴が目の前に迫る。
1番大きな少年が私の前に出た。
そして、小さな女の子の視界は暗転した。
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