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「私は、カップは自然に割れてしまったのだと思います」とめろんを見て、みかんは言った。

 するとめろんは少しだけ考えたあとで「やはりそうなんでしょうか?」とみかんを見て言った。

「めろんさんもそうだと思っているんですか?」みかんは言う。

「ええ。最初はかっとなってしまって誰かがカップを割ってしまったと思っていたんですけど、時間がたってあらためて考えてみると、すごく綺麗に割れていますし、自然に割れてしまったのかもと思うようになりました」とちょっと反省した顔でめろんは言った。

 それからみかんとめろんは割れてしまったお嬢様のカップを二人で黙ったまま少しの間、見つめていた。

「あのカップ。直せないんでしょうか?」とめろんを見てみかんは言った。カップは綺麗に割れている。なにかでくっつけることができれば、元の形に戻るような気がした。

「それはできません。お嬢様のお食事に使うものですし、もし自然に割れたのなら、また割れてしまうかもしれません。紅茶がこぼれてお嬢様が火傷をしてしまうかもしれませんし、もし使わないでしまっておいたとしても、なにかの間違いでそのカップを食事のときに使ってしまうかもしれません。だから、そうですね。お嬢様も捨てなさいって言っていましたし、……、捨てましょう。やっぱり危ないですからね」と優しい顔でめろんは言った。

「はい」とにっこりと笑ってみかんは言った。

 どうやらめろんのみんなへの疑いも晴れたようだった。これで明日からちゃんとお昼ご飯が食べられるだろう。(今もお腹が減っていたし、素直に嬉しかった)

 めろんは捨てると言っていたのに、割れてしまったカップを丁寧にもう一度布をでくるんで最初のように大切なものをしまうようにして自分の机の中にそっとしまった。そんなめろんを見ながら『捨てる』と言う言葉を聞いてみかんは自分が前のご主人様から捨てられたときのこと(笑顔の裏側で)思い出していた。

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