なんか、頑張ってるわ!という実感する時

白鷺(楓賢)

本編

ふと、いつもと同じように過ごしていたある日、突然のように思った。「なんか、今日は頑張ったな」と。特別に大きな成果をあげたわけでも、誰かに褒められたわけでもない。ただ、自分の中に静かに広がる達成感が、心の中でささやいていた。


この感覚は、誰にでも一度は訪れるものかもしれない。特に作業所での日々の生活の中で、淡々とした仕事をこなしていく中で感じることがある。毎日が変わり映えしないように見えるけれど、それでも確かに何かを積み重ねている。箱を折ったり、チラシを封入したり、どれも単調で地味な作業だが、それが終わった時、ふと感じるのだ。「今日は、頑張れたな」と。


作業所に通い始めてから、こうした小さな達成感を感じる機会が増えた気がする。朝から出かけて、いつもと同じ道を歩いて作業所に向かい、同じ仕事を繰り返す。それは、他の人から見れば、単に「毎日のルーチン」と捉えられるかもしれない。でも、自分にとっては違う。1日1日の仕事が、積み重なっていく。手を動かし、身体を動かし、それを続けることで、自分自身に少しずつ自信が積もっていく。


作業所では、特別に成果を求められるわけではない。速さや完璧さを競うこともない。むしろ、ゆっくりでもいい、確実に仕事をこなしていくことが大切だと教えられている。そうした環境だからこそ、安心して取り組むことができるのだろう。自分のペースで進められる環境の中で、日々の積み重ねが少しずつ結果となって現れる。それは決して派手ではないけれど、自分にとっては大きな意味を持つ。


例えば、箱折りの作業。最初は上手くできず、どれだけ時間をかけても一つの箱を完成させるのに苦労していた。それでも、続けていくうちに、少しずつコツを掴んで、今ではかなりのスピードで箱を折れるようになった。それが当たり前のように思えるかもしれないが、自分にとっては大きな進歩だ。こうした小さな変化を積み重ねることで、「頑張ったな」と感じることができる。


また、達成感を感じる瞬間は、不意に訪れることが多い。仕事の最中に感じることは少なく、むしろ作業が終わった後、家に帰ってリラックスしている時に「今日は意外と頑張ったんじゃないか?」と思うことが多い。その瞬間に訪れる満足感や充実感は、何物にも代えがたいものだ。周囲の評価や他人との比較ではなく、自分自身の中で「今日はいい仕事ができた」と感じられることが、何よりも大切だと思う。


この「頑張った」という感覚は、決して毎日訪れるものではない。時には、どれだけ頑張っても、全く達成感を感じられない日もある。何もかもが上手くいかない日や、気分が沈んでいて仕事に集中できない日もある。そういう日は、「頑張れた」という実感が全く得られず、むしろ自己嫌悪に陥ることさえある。


それでも、そういう日があるからこそ、達成感を感じる瞬間は特別なものだ。良い日も悪い日もある。それが当たり前だと受け入れることができるようになったのは、作業所での仕事を通じて少しずつ学んできたことかもしれない。すべてが完璧に進むわけではなく、時には失敗もある。それでも、諦めずに続けていけば、必ず「なんか、頑張れた!」と感じる日が来る。


また、作業所での仕事を通じて、人とのつながりも感じられるようになった。普段はあまり話すことができない自分でも、作業中に同じ仕事をする仲間と自然に会話が生まれることがある。そうした些細なコミュニケーションも、自分にとっては大きな刺激であり、支えとなっている。頑張れた実感は、必ずしも自分だけの力ではなく、周りの人たちの存在によって支えられている部分も大きい。


こうした日々の積み重ねが、やりがいや達成感に繋がっていくのだろう。単純作業であっても、それが自分にとっての大切な一歩となり、やがて大きな自信に繋がっていく。だからこそ、「なんか、頑張れた」と感じる瞬間を大切にしていきたい。


この感覚が続けば、もっと大きな目標に向かって進んでいけるかもしれない。作業所での日々は、地道でゆっくりとした歩みではあるが、それでも確実に前進している。その一歩一歩が、自分にとっての大切な道となっているのだ。


だから、今日もまた、なんか、頑張ってるわ。

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