第6話 燃え盛る決意
階段を上がって、二階に来た暗殺者たちが目にしたのは、堂々と立つゼロ。
「何驚いてんだよ。斬られたい奴から来い!」
そう言うと、暗殺者たちはしばらく顔を見合わせた後、全員で拳銃を構えた。
「バカ野郎が!」
そうゼロに言った後、全員が引き金を引く。
その瞬間、辺りが爆発し暗殺者たちは爆煙に包まれた。
爆発範囲外にいた吹雪は無傷。ゼロはギリギリ範囲内いたので、爆風で吹き飛ばされ、水の溜まったタンクに激突した。
「イッタ....し、死ぬかと思った...」
「大丈夫?ガス爆発ってこんなにすごいんだね。援護必要なかったし。」
「そうだな...もしもまた、こういう事になったら、この作戦はやめよう。」
骨は折れてなさそうだな。爆風のおかげで弾丸も食らってないし、まあ最悪の方法ではないな。
そう思いながら、吹雪と共にビルの階段を上る。奇妙なことに、二階以上からは人の気配がしない。一階や出入口に守りを固めている。
ホウオウ、HAWK幹部の中でもトップクラスの実力者...
「吹雪、気合い入れるぞ。」
「今更?私は充分入ってるよ。」
「標的はこの上の階だ。行くぞ。」
「うん!」
階段をゆっくりと上ると、予想通りそこには書類と同じ、オレンジ髪の大柄な男が立っていた。
しばらくゼロと吹雪のことを睨んだ後、口を開いて言った。
「まさか部下が負けるとはな。まあいい、君に敬意を払おう。同じ強者として。」
ホウオウは拳銃の入ったホルスターを、投げ捨てて、腰を低くし拳を構えた。
「・・・お前のこと気に入った。拳でやり合いたいところだけど、本気で行かないのは...無礼だよな!」
「ああ。その刀が君の実力なのなら、俺はそれを君の一部と見る。」
「吹雪、お前は先に外に行ってろ。一対一で勝負がしたい。」
吹雪はそれを聞き、少し不安を抱えながらも階段を降りていった。
刀をしっかりと構えると、ホウオウもいつでも攻撃出来る構えになる。
確実に俺より強い。だからこそ、こいつに勝たなきゃ、俺は成長出来ない!
「いつでも来い。開始の合図など、戦いに要らん。」
「なら、こっちから行かせてもらうぜ!」
近付き頭目掛けて、刀を振り下ろす。
しかし刀は避けられ、腹部に熱く強いパンチを入れられる。
「くっ...火を操る能力。大したもんだな....」
「まだ戦いは終わっておらんぞ!」
胴体に何発も打ち込まれる打撃、それをより強力なものにする炎。
反撃の隙がない攻撃に意識を失いそうになる。しかし、より強い一撃で壁に吹き飛ばされ、血反吐が出ると共に、何故か意識がハッキリと目覚める。
「痛ぇ。でも、頭は冴えてきた....
「は、速い!?」
狙っていた心臓には当たらなかったものの、腹部にゼロの刀が突き刺さる。
刀を引き抜き、瞬時に刀を振り上げる。
ゼロの持っている刀の切れ味は全て抜群。手入れの仕方もあって最高の切れ味を維持している。
しかしその刃は、ホウオウの腕を切り落とすことができなかった。
「刀身が溶けてる!?」
もはやゼロの刀は、鉄の棒と化した。
驚きで体が固まっていると、強力なキックがゼロをビルの柱に吹き飛ばした。
ダメだ...動けない。上手く呼吸ができない...刀も使い物にならない、もう....
「グハッ...ま、負けてたまるかよ。俺は...俺は、なるんだよ....世界一の、暗殺者に!!」
酷く震えた手で、刀を拾い構える。
とっくに限界は迎えてる。酸素も血も体に全然足らない...でも、死んだら何もかも終わっちまう....それだけは、ごめんだね!
「まだ動くか。その決意、相当な物なのだろう。もしまだ先程の、鬼人流とやらが使えるのなら、使って見せろ。こちらも全力でその技を受け止めて見せよう。」
「言われなくとも...その気だ。」
最後の余力を全て刀身に込める。
絶対に外さない。この一発で決める!
「
「
辺りが炎に包まれた。ビルの柱は少しずつ溶けていき、ビルが崩壊し始める。
「認めよう強き者よ...君の勝ちだ...」
「ありが..と...よ」
「戦いにおいて、共倒れ..など...許されん。」
そう言ってゼロに手を伸ばすと、たちまち火がゼロの周りから消え、ホウオウの体を燃やすように集まっていく。
そして、ホウオウは炎に包まれて灰となっていった。
「よい、しょっと!これは...生きてる、よね?」
吹雪が、ビルの崩壊が一通り済んでから、ゼロのことを探し、見つけ出した。
傷はすごいが、ビルの崩壊による怪我は見当たらなかった。
「では、お願いします!」
RAVENの救急隊にゼロのことを任せ、瓦礫の中を漁る。
「お、あった...あってるよね?刀身が溶けてて、原型ほぼ無いけど...ん?なにこれ。」
能力の雨で、火は全て消化したはずだが、ゼロが埋まっていた場所に、穏やかに燃える火が残っていた。
「・・・ホウオウ。強さに誰よりも誠実で、強さを誰よりも愛する者、か。」
吹雪は火の前で手を合わせお辞儀をした。そうするのが、普通であると思ったからである。
「ゼロのことを守ってくれたのであれば、ありがとうございました。」
そう言って、その場を後にする。
吹雪を押すかのように、風が吹きその火は消えた。
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