第2話 無能力者

 颯斗と寒菜は任務を受け取り、その場所へと向かった。

「そうだ颯斗、管理人の人に言われたんだけど、これからはちゃんとコードネームで呼び合えだってさ。」

「そうか。なら、よろしくな吹雪。」

「こちらこそ、よろしくね。ゼロ」

 多少違和感を感じながらもコードネームで呼び合った。

そんなことをしていると、二人は標的のいる場所に到着した。


「ここか。準備は?」

「もちろん出来てるよ。」

 今回の任務内容は、暗殺組織HAWKホークに所属しているコードネーム「ロック」の殺害。

 RAVEN以外にも暗殺組織は存在している。

しかし、日本に存在する暗殺組織はRAVEN以外全て政府非公認の違法組織なのである。

 初任務から早速、殺しを仕事としている者と戦わせるというのはどうなのだろうか。

 そう思いながら、工事現場に入っていく。

重機や瓦礫が置かれたままになっている。話によるとロックが現場の所長を殺したため、周りの人はすぐに逃げ出したそう。

「ねえゼロ、この拳銃ってどうやって弾入れんの?」

「は?!なんで知らないんだよ...」

「だって銃好きじゃないもん!」

「好きじゃなくても、覚えろよ。」

 呆れながらも丁寧に弾の装填方法を教える。あ〜、と感心する吹雪を見てため息を付く。

「覚えとけよ。」

「任せて。知っての通り、覚えるのは早..」

 腰に手を当てて自慢げに吹雪が話していると、後ろから銃声が聞こえた。

すぐに振り向くと、そこには任務の資料に貼られた写真の人物と同じ人物が。

「お前がロックか。」

「もしかしてお前...RAVENの奴か?」

「ああ、そうだよ!」

 ゼロは持っている刀を抜き、ロックに斬りかかる。

しかし、その刀身に当たったのは瓦礫。

「なるほど。情報通りの能力だな。」

 能力、それは人間に与えられた不可能を可能にする力。

そして、ロックの能力は「石を操る能力」。

「この場所に来た時点で、てめぇらの負けは確定しているんだよ!石闘牛ストーンバイソン

 そうロックが叫ぶと、辺りの瓦礫が一箇所に集まり闘牛の形を成す。

形成された闘牛は、ゼロを目掛けて走り出した。

「ゼロ!!」

 避ける暇もなくゼロは、突撃を正面から食らった。そのパワーは凄まじく、工事現場の壁に叩きつけられる。

「はぁはぁ...やってくれるじゃねえか....」

「ゼロは休んでて!動いたら悪化するだけだよ!」

「嫌だね。吹雪に心配されるほど、弱かねぇよ!鬼人流きじんりゅう 岩石斬りがんせきぎり!!」

 刀を闘牛に思い切り振り下ろす。闘牛はふたつに切られ、ただの瓦礫に戻った。

 それを見た吹雪は、小さくため息を付き言った。

「そう言うとは思ったよ。さ、ロックさん。しっかり防寒対策しときなよ!」

 吹雪がそう言いながら空に手を掲げると、空から白いものが降り注ぐ。

そう、吹雪の能力は「雪を降らせる能力」。

「これがお前の能力か。くだらないな。」

「それは、どうかな?」

 ニヤリと吹雪が笑うと、徐々に空から降る雪は大きくなり、ひょうとなった。

「くっ、厄介なことを...」

「ゼロ!って、あんな状態で使っちゃったし無理か。なら、私がやらせてもらうよ!」

 鬼人流。それは鬼が使う刀の流派であり、人間の体で使うとなれば、一度でかなりの体力を消耗することになる。

 それを理解しているので吹雪は、拳銃を取り出して構える。もちろんロックも。

「死にたくなければ、その銃を置いてRAVENの情報を教えな。」

「もちろん、嫌だ。」

「ならば、死ね!」

「集中豪雹。死んでたまるか、ってね。」

 ロックは引き金を引こうとしたが、空から降る無数の雹に撃たれ意識を失った。

「私たちの勝ち。じゃあね。」

 ロックの頭に弾丸を撃ち込み、徐々に溶け始める雹を足で割りながらゼロの方へと向かった。

「俺も...能力欲しいなぁ....」

 意識を失いかけているゼロは、小さな声でそう嘆いた。

「ゼロに能力があったらいよいよ、恐ろしく感じるけどね。」

 颯斗ゼロは、世界で唯一「能力を持たない人間」である。しかし、その身体能力は普通の人間の域を超えている。

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