第16話
……だけど、やっぱり寂しい。
今日だってこないだ買ったばかりの新しい服に、新色のリップを付けて、あいつと会うための準備は完璧だった。
『落ち着いたら連絡あるかもしんねぇけど、いつになるか分かんねぇから待つのはやめとけ』
「うん、分かった。兄貴、わざわざありがとね」
『英梨お前、』
「何?」
『いや……』
「兄貴も忙しいんでしょー?早く切ればぁ?」
『あぁ』
ふ、と笑った兄貴は多分気付いてる。
無理やり明るくしたあたしの声に。
ヒロちゃん、ちゃんと守ってよね。
あたしは最後にそれだけ言って、一方的に電話を切った。
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