【第一部完】ある日ダンジョンの存在が当たり前になった世界。そのダンジョンの一つがゲームで作ったマイ拠点。当然そこのボスは自分です

廃棄工場長

第一章 『大悪魔』リリス

第1話 目覚め


 ――人外である主人公を操作して、難攻不落の拠点を築き上げろ!



 そんなキャッチコピーで有名なゲーム。そのタイトルは『モンスター・ハウス』。しがない会社員である俺――佐藤利夫が、最近熱中していて、数少ない趣味の一つのゲームだ。

 このゲームでは、プレイヤーは多種多様な種族から一つを選択し、一つの拠点を制作。その拠点を周辺のモンスターを倒したり、侵入者を撃退したりして得られる報酬を使って、強化していく。

 ジャンルで言えば、タワーディフェンスに区分される。シンプルなシステムながら、美麗なグラフィックや全種類のモンスターに用意された個別ボイスで、人気なゲームだ。



 そしてこのゲームをプレイしていたことを切っかけに、俺の可もなく不可もない人生は大きく狂うことになる。





 ある夜、俺は仕事のストレスから解放されるために最新のゲーム『モンスター・ハウス』に没頭していた。

 今日も今日とて拠点の強化の為に、自身の分身であるアバターを操作して、とあるダンジョンに訪れていた。そのダンジョンの攻略難易度は、最難関レベルではあるが俺のアバターのレベルはカンストしていて、配下のNPCも強力な者を総動員した為、数時間は要したが無事に攻略できた。

 その達成感に満足しつつ、俺は画面に表示されたアバターを眺める。



 俺の分身であるアバターは、冴えない三十路手前のサラリーマンとは似ても似つかない、小柄で可愛らしい容姿の少女であった。

 黒髪黒目の十歳前後くらいの見た目で、種族は『悪魔』系の最終進化の『大悪魔』。

 服装も黒色のローブを羽織っていて、同色の見る者に悍ましさを感じさせる装飾が施された杖。

 これが『モンスター・ハウス』内での俺の化身だ。このビジュアルに調整するのに、数時間かかったのは自分だけの秘密である。



 ちなみに『モンスター・ハウス』では、プレイヤーはモンスターを、ゲーム内通貨を消費するかアバターの魔法を使用ことで召喚でき、拠点に配置することが可能である。

 俺はアバターの魔法で召喚したモンスターを中心になっている為、同じ顔ぶれのモンスターが多い。その分、粒ぞろいのモンスターを選んで配置しているつもりだ。

 また階層ごとには、『特別な改造』を施したモンスターをボスとして配置している。そのボス達は悍ましい異形系から、カッコイイ系に美少女的な可愛い系などの様々な見た目だ。

 性能も徘徊モンスターとは一線を画すレベルである。

 それだけではなく、会話の時や戦闘時に発するキャラクターのボイスも、用意された何十通りの中から好きに選ぶことができ、それぞれの個性を詳細に決めることが可能だ。

 お手製のNPCの中で一番のお気に入りは――。



 ――流石に今は戦利品を拠点に持ち帰るのが先決だろうと思考を中断し、作業を再開した。何故なら拠点外でうろちょろしていると、ゲーム内での敵対勢力や野良のモンスターにエンカウントとする恐れがあるからだ。

 負けるつもりはないが、消耗している状態でこれ以上の戦闘はなるべく避けたい。



 俺は攻略したダンジョンから集められるだけのアイテムをボックスに入れ、入り切らなかった分はNPCに持たせて拠点に帰還した。

 自分の拠点の最深部にアバターを移動させた俺は、押収してきたアイテムの一覧を眺め、拠点にどのような追加のモンスターを召喚したり、トラップを配置するか、しばらくの間悩んでいた。



 しかし、その日は特に長時間画面を見つめ続け、うとうとしていた俺は目を閉じてしまった。一度目を瞑ると、日々の疲れがどっと襲ってくる。



(やばい……眠すぎる)



 うっすらと片目を開けて、部屋の壁にかけてある時計を確認する。時刻は午前二時過ぎ。よっぽどダンジョン攻略に集中していたようだ。

 明日も仕事がある為、これ以上のプレイは支障が出てしまう。



 大きな欠伸をかみ殺しながら、ゲームの進行状況を保存し電源を落とす。その作業を終わらせると、硬い感触のベッドにダイブした。

 そして最後の気力を振り絞って、スマホの目覚まし時計が設定されていることを確認すると、俺は意識を手放した。





「――様! 起きてください!?」

「――ふぇ?」



 遊び心の欠片もないアラーム音によって起床するはずの俺の意識を眠りからすくい上げたのは、金髪の美少女メイドであった。





―――後書き―――


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