第9話 お調子者


 冷泉と連絡先を交換した夜────


 その日も僕は、ゲーム世界に来ていた。



 前回レッドスライムにボコられた傷が、まだ少し痛む……。

 なので、村を出て戦闘する気はないが、村の中でやれることはある。


 このゲームは寝ている間にも、体力や精神力を使う。


 連続してプレイし続けていては、疲れてしまうのだ。


 やり過ぎは良くないと、冷泉からも注意された。


 それでも、リアル世界で報酬が貰えると聞き、ちょっとでもゲームを進めておきたくなった。





 ゲーム世界に入り、まずはステータス画面を見る。


 職業の『冒険者』と『魔法使い』のレベルが、共に3まで上昇していた。

 HPとMPが減少していて、回復しきっていない。


 レベルが上がったのに、ステータスに変化なし。

 その代わり、ボーナスポイントが6付与されていた。



 変化と言えば、このくらいだ。


 職業のレベルが上がっても、ステータスの数字が上がる訳ではないようだ。

 代わりにボーナスポイントが貰えるので、それで好きな数字を上昇させることが出来る仕様らしい。



 ボーナスポイントで魔法を取りたいが、ポイントが一番少ない初級魔術でも、50ポイント必要だ。


 ポイントを貯めるか、使うかで迷う。

 魔法を覚えれば、冒険者ギルドで仲間の募集が出来るようになるだろうが、貯まるまでの道のりが長い────


 それよりも、ステータスを強化し、戦闘能力を上げた方が良いかもしれない。



 ……。


 …………。



 僕はポイントの使い道を、一旦保留することにした。


 まだ6ポイントしかないし、慌てて使わなくてもいい。


 ────スライムは一撃で倒せている。

 しばらく様子を見てから、使い道を決めよう。



 次に、アイテムボックスのチェックだ。

  

 ブルースライムの液体と、レッドスライムの液体というアイテムがある。

 ともに食材や素材として使われるらしく、村の道具屋で売却できる。


 早速、道具屋に行って、売ってこよう。



 ……。


 スライムの液体は、ブルーが金貨一枚、レッドが三枚で売れた。

 結構な高級食材の様だ。


 ゲーム内での値段設定なので、本当に価値があるのかは不明だが……。


 とにかく僕はドロップアイテムを売り、金貨を得た。

 これで所持金は、金貨三枚だ。



 宿屋に戻って宿代を払う。


 宿の代金は三泊で、金貨一枚になる。 

 ゲームにログインする度に、一日経過する設定なので、今日で三日目だ。


 ちょうど、宿に泊まれる期限だったので、引き続き、泊まるためのお金を払う。


 

 宿屋に支払うお金がないプレイヤーは、宿には泊まれないので村の広場で野宿することになる。


 そこでもログアウト出来るが、HPとMPが回復が極めて遅くなる。

 ────結構シビアなゲームだ。






 さて、これで今日やることは済んだ。

 

 後は、そうだな……。

 冒険者ギルドの様子を見に行くか────



 初日で嫌なことがあって、あまり行きたくはない……。


 だが、ゲームを進めようと思えば、避けては通れない場所だ。



「すー、はー-っ」


 …………よし!


 僕は長めに深呼吸してから、冒険者ギルドに向かった。





 ……。


 …………。



「おー、大魔法使い様のご登場だぜ、みんなー!!」


 ギルドに入った僕を目ざとく見つけたお調子者の男が、さっそく囃し立てる。



 ────このゲームはホント、何なんだよ?


 無駄にリアルというか、凝っている。



 僕は男を無視して、掲示板を見に行く。






 案の定、僕の仲間になりたいという応募者は一人もいなかった。


 ────これは、しょうがない。


 モンスター退治は命懸けの仕事だ。



 魔法の使いえない魔法使いのパーティに、参加する馬鹿はいないだろう。

 

 僕が諦めて帰ろうとすると、例の男がまた大声で話し出す。



「なんだよ、応募者は一人もいなかったのか、可哀そうになー、何だったら俺っちが助けてやってもいいぜー。三日で金貨一枚だ。────どうだ、払えるか?」



 …………。


 ……誰がお前なんか。


 僕は断ろうとして、思い留まる。



 何とかとはさみは、使いようと言うじゃないか。



 


「金貨一枚ですね。わかりました、あなたを雇います」


 僕はこの男を、雇うことにした。



「────は? えっ? ────本気か? 小僧……」


 お調子者の男は、心底嫌そうにしている。


 だが、もう遅い!!



 自分で言い出したんだ。


 仲間になって貰おうじゃないか────


 






 お調子者の男は『スズヨウ』という名前で、短剣使いだそうだ。



 ……。


 せっかく金を出して雇うのなら、盾装備のタンクが良かったが──

 まあ、コイツでもいい。

 

 どうせ、使い捨てなんだ。





 スズヨウさんを雇うのに、金貨一枚が必要になる。


 冒険者ギルドで金貨を支払ってから、三日間──

 つまり僕が三回ログインする間だけ、彼を仲間に出来る。


 次にログインした時に、雇う約束を取り付けた。




 否な奴だが、取り敢えず仲間を雇えることになった。



 この日はここで、ゲームを切り上げよう。

 僕は宿に戻って、眠った。

 


 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv03 魔法使いLv03                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP       80/140

 最大MP      600/670


 膂力         28

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         26

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス


 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット


 所持金

 金貨2枚 


 ボーナスポイント

        6


 *************************


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